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ドクターのためのインターネット講座 第4回

第4回 がらくた情報の山の中に貴重な情報が埋もれている

MEDIAPEX インターネット進化論  1999年5月15日 第195号 ©︎鈴木吉彦 医学博士

インターネットが始まったばかりの頃

 インターネットが始まったばかりの頃、数人で運営しているプロバイダーや、個人のホームページが急増しました。プロバイダー運営者やホームページの作成者らは、自分は世界中へ情報を発信し、インターネットの先駆者的存在になれると信じていました。世界を相手に広くビジネスができると信じて疑わない人も多くいました。しかし、そのホームページをみにきてくれる人の数が少なければ、それは街頭でビラを配る作業やその効果くらいのものでしかないことは後でわかったわけです。

 確かに、インターネットがブームになり始めた96年ごろには、そうしたインターネットで夢をみる人たちが多くおりました。みんなが口を揃えて、本気で「自分は世界中に情報発信している、世界を支配できる」と豪語していた時代でした。インターネットの世界では、まだ情報量も少なく、ホームページを作れること自体大変なテクニックが必要でしたから、ホームページを作れただけで特殊な才能を手にしたという錯覚を持った人も多かったようです。そして、みんなが口々にYahooやAmazon.comの成功を引き合いに出したものでした。

がらくた(ジャンク)情報ばかりが溜まってしまった

 しかし、そうした個人のホームページが増えるにつれ、インターネットを利用すると、どんどん無駄に時間を費やされてしまうことに、利用者みんなが気がつき始めました。個人が趣味で通ったコンテンツでは、役立つものは少ないためです。そのうち、どんどん、そうした情報ばかりが増え続け、現在では、インターネット情報に流されている情報の多くは、どうでも良いような、がらくた情報(インターネット用語ではジャンク情報と言います)ばかりです。

 こうした事態を招いた本当の理由は、インターネット時で情報を「発信するコストが非常に安いから」ということで説明ができます。通常個人がテレビ局、新聞社や雑誌社と同じような情報発信をインターネットを用いないで行おうと思ったら、膨大な費用がかかるでしょう。しかし、インターネットの場合、一般人でも、お金がない人でも、ホームページさえ作る事ができれば、地球のどこへでも情報を発信でき、かつ人気が出るホームページを作れば、それだけでテレビや新聞社の発信力を追い越すことも可能になる潜在能力を持っています。

 しかし、このように情報発信にかかる費用が安くなれば、発信される情報の価値も、それに見合うだけ下がってしまうのは当然のことと言えます。普通の新聞誌では取り上げないようなつまらない記事でも発信できてしまうからです。

「からっぽの洞窟」との批判も

誰でもが、個人で情報を発信すること自体が悪いわけではありません。しかし、読者にとっては迷惑です。多くのがらくた情報の中から読者が選択し、かつそれで内容を信用するまでにはかなりの時間的および経費的ロスが発生してしまうからです。がらくた情報ばかりが集まるならば、「インターネットは使えない、むしろ紙媒体(新聞、雑誌)やテレビ、ラジオの方が利用価値は高い」という人もいます。「インターネットはからっぽの洞窟」という批判をいう人も出てきました。

 しかし、確かにインターネットの世界では、ガラクタ情報が多いのですが、そればかりが増えてきたわけではありません。非常に重要な情報も、同時にあるいは、それ以上の速度で増えてきているわけなのです。

 インターネットを利用する上で、特に重要なのは、”貴重な情報をがらくた情報の中から、どうやって探していくか”という点なのです。例えて言えば、ごみやがらくたの中からダイヤをどうやって拾うか、ということこそ、インターネットを利用するうえで、とても大切なポイントなのです。

使い方次第で「宝の山」に

インターネットを使い始めたばかりの人たちは、こうした状況に気がついていない事が多いようです。まだ、インターネットに無関心な人が多いし、関心があっても電子メールくらいしか利用していないという人も多いからです。

驚いたことに、そうした人たちは、インターネットを使いこなせずに、かえって批判をすることすらあります。伝説的な価値観に固執する人はどの時代にもおりますが、決まって新しい価値観を認めず、最初は無視します。が、無視できない存在になると、あら探しをし始め、新しい価値観を否定しようとするわけです。

 インターネットには、がらくた情報しかない、ということを批判の理由として、持ち出す人もいます。病院や会社でインターネットを入れよう、と提案する若い医師たちにとって、そんなものを入れてどうするんだ、と反対する人たちの多くは、そうした古い価値観を持っている方たちでしょう。

 そうした人たちには、インターネットは悪い使い方をしている人にとっては、「空っぽの洞窟、がらくたの山」にもなりますが、上手な使い方をしている人にとっては、「ダイヤが埋もれる鉱山や宝の山」になります、ということをよく理解してもらう必要があるでしょう。

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