My Medipro

インターネットを医療のために、みんなのために

これからの医療はインターネトでこんなに変わる

鈴木吉彦 ソニーコミュニケーションネットワーク㈱General Manager 医学博士

雑誌名:Medical ASAHI   ●●●●年  ●月   朝日新聞社  

8ページから13ページまで コピーライト、©鈴木吉彦

 インターネットは、今後の世界を変える重要な社会基盤(インフラストラクチャー)になるであろう。また、デジタル化された情報通信網は、インターネットに限らず、DVDなどにも応用され、高速インターネットの流れとともに、高速や大容量のデータを扱うことのできる重要な媒体となっていくことが想像される。特に、プレイステーション2が発売されてから、DVDの普及も急激となり、医療の画像の媒体は、DVDや高速インターネットといった媒体を利用して配信される時代に移行していくかもしれない。

 インターネットを中心とした情報通信ネットワークの設備が進み、現在の電話やテレビなみの普及率を達成すると、インターネットを行き交う情報は、大きな価値を持つようになる。その時代には、コンピュータ、通信、情報家電、出版、放送メディアなどが統合した産業、いわゆるIT(information technology)業界と呼ばれる産業が急激に発達することになるであろう。最近、マスコミなどで「IT革命」と呼ばれるのは、この影響が革命に匹敵するくらい、大きな社会的影響力を持っていることを示唆している。

 そして、これが医療分野に普及することになると、高度の情報伝達が可能になり、さまざまな場面、さまざまな人、さまざまな状況、さまざまなシステムにおいて、大きな変革をもたらすことになるだろう。最近では、日本でもアメリカでも、インターネットを中心に、医学や医療分野の構造が、大きく変わろうとしている。

日本のインターネット環境の問題点

 インターネットや、ホームページには、さまざまな便利な面があるが、日本のインターネット環境は、まだ優れたものとはいえない。電話代も高く、複数のホームぺージをたどって目的の情報にたどり着くには、多くの時間や電話料がかかる。

 そもため、できるだけ早く、ほしい情報に到達するための技術というのは、日本では、特に日常業務で忙しい医師にとっては、インターネットを利用するための重要な条件である。そして、そうした条件を満たす医学関連のホームページは、日本ではあまり多くなかったのである。

多くのコンテンツが1カ所に集まる利便性

 多くの出版社や情報を持つ会社(以下、information providerからIPと略す)が、ひとつずつホームページを持っていても、インターネット世界で情報を発信していても、インターネットの世界は無限に広いので、利用者はどこにどの役立つコンテンツがあるかがわかりにくい。

 また、例えば多くの情報提供会社が、独自の物理的空間を持って情報を提供しようとする。それは、書店でたとえれば、各出版会社ごとに本棚があり、各社ごとに本が陳列されているようなものである。しかし、それでは利用者は混乱し、自分の目的の本を出すことはできない。特に、忙しい医療関係者が、そうしたコンテンツを探すということだけに時間を費やすのは、もったいなく難しい。

 この問題を解決するには、多くの情報提供会社が提供する情報を誰かがカテゴリーごとに整理し、利用者がわかりやすく、探しやすい形にし陳列しておく必要がある。その整理の際には、どの情報が質が高く、多くの読者が必要としているか、また、どの情報は必要が低く利用度が少ないか、などの判断をしなくてはいけいない。つまり、アンカーマンが必要となるわけである。

日本最大級のISP、So-netが支援

 So-netは、ソニーコミュニケーションネットワーク株式会社が運営するインターネット接続プロバイダー(Internet Service Provider:ISPと呼ばれる)事業のサービス名である。So-netは現在、130万人の会員を有する日本で最大級のプロバイダーであり、かつ、コンテンツの優秀性については、日本で最大レベルの能力を持つプロバイダーとして評価されている。また、So-netのコンテンツ部隊というのはソニーグループのITコンテンツ戦略の一翼を担う役割を持っており、かつ、世界最先端のソニーの技術をも応用できる立場にある。

 そこで、So-netのGeneral Managerとなった私は、上記の問題を解決するべく、医療情報について、So-netというISPの有利性を活用しながら、医療関係者にとって使いやすい、便利な、ひとつの大きな情報の街を作ろうと考えた。その活動を4年間、地道に形にしてきたものが、Mediproである。具体的には、多くの健康医療関連の書籍出版社や製薬企業といっしょに、情報を整理し、質を管理し、アクセスしやすくしたり、見つけやすくするためといった努力を続け、それによって、情報が集まる街、つまり、インターネット上での仮想協力都市を構築してきたのである。(Mediproとは、Medical Professionの略。http://www.so-net.ne.jp/medipro/)。

 So-netと医療情報提供会社との関係は、たとえれば、ISPであるSo-netが街を作り、その街に情報提供会社がビルを立てて営業する、という関係にたとえられる。So-netは各情報提供会社の商業行為や情報提供活動をサポートし、街全体をまとめて宣伝するという活動をしている。各情報提供会社が快く情報提供するために、So-netは街の環境(基盤、infrastructure)を整備し、ごみを掃除し、犯罪を防止する役割を果たしている(図1)。

例えば、インターネットの仮想空間では、人気が出てくるとアクセスが増え、回線が混雑する。そうしたトラフィックの管理はSo-netが行なっている。また、有料情報に対する課金システムの提供や、検索エンジンをはじめとする各種プログラム(cgiやssiなど)の環境作りなども行っている。

さらに、内容がよいコンテンツだけを提供できるようにと、提携会社としては高品質の情報を提供する会社ばかりが集まるように努力している。

みんなのための仮想協力空間都市・Medipro

こうした地道な街作りの作業が認められて、2000年1月には、Mediproは、約60社が集合する仮想協力都市空間になった。その結果、医療関係者にとって役立つデジタル・医学コンテンツの非常に多くのものが、「Medipro」の中に集約し、利用者にとっては便利な空間が完成している。

 このホームページには、文献検索や、医学関連の専門的なニュースが多数集約されているだけではなく、学会、公的情報から求人・求職まで、日本における医療関係者にとって必要な情報が、各方面から集められてきている。医学関係者の方々であれば、必ず役立つ情報ばかりと自負している。日本における代表的な医学雑誌や医学コンテンツのほとんどがMediproに集結しはじめている、といって過言ではない。

 そして、医学関係者以外の方々には、専門的すぎる内容ばかりであり、このように専門性が高いことが、一般患者がアクセスする頻度を減らし、それがさらにQualityを高めることになっている、という相乗効果も生み出している(図2・10頁参照)。

製薬企業側からの提案から誕生したMy Medipro

日本では、医療関係者限定のホームページ空間からでなければ、薬剤の広告はできない。しかしながら、行政や市民からは、薬品の安全性情報や副作用情報はインターネットに公開されることを、製薬企業に義務づける傾向にある。良い情報を公開するのは制限されて、かつ、悪い情報は必ず公開しなくてはならない、つまり、公開を義務づけられる傾向にあるわけであるから、結果的には、製薬企業にとってはネガティブ情報ばかりをインターネット上に公開しなくてはいけない、ということになってしまう。しかしながら、それは製薬企業にとって、あるいは、薬剤の本当の効果を知りたいと願う医師にとって、好ましいあり方かというと、そうではないであろう。

 そこで、薬の正しい宣伝ができて、薬の効用をきちんと医師に伝えられるシステムを、インターネット上に構築できないだろうか、という依頼が製薬会社の数社から3年前に私のほうにあった。そこで私は、これは医師のためにも、新薬を待ち望んでいる患者のためにも、真剣に考えなくてはいけない問題だと思った。

 医師は、患者を治したい、治らない病気を治してみたい、そして患者を喜ばせたいという熱意や期待がある。そのため、新薬の情報はほしいのはもちろん、役立つ新薬であれば、ぜひ使ってみたいと思っている。そういう有益な情報がインターネットから得られないのでは、医療関係者にとっても不幸である。そこで、製薬会社にとっても、医師にとっても、有益な情報を、しっかりとした形でホームページ上に提供できないだろうかと考えた。私は医師なので、その意味では本当に医師や製薬企業の立場に立って、こうした問題を考えることができたわけである。

Broad Vision社のOne-To-Oneを利用した世界で最初の医療サイト

 こうした問題を解決するために構築したシステムが、One-To-Oneの機能を持つMy Mediproである。One-To-One機能というのは、ホームページの仕組みの中に、利用者にプロフィール登録を義務づけ、利用者が内容を閲覧する際には、その利用者のプロフィールに合わせて内容を表示していく、という仕組みである。この機能は、アメリカのBroad Vision社のシステムを利用している(Broad Vision社のOne-To-Oneは、日本では多くの金融サイトで利用されている、世界最大のOne-To-One technologyである)。

 例えば、私は専門が糖尿病なので、本当に欲しいのは糖尿病の情報だけであって、他科の情報はあまり必要ではない。そこで、製薬企業や医学出版社側からしてみれば、情報提供をする際に、「利用者であるこの医師は専門は糖尿病だから、糖尿病関連の情報がほしいはずだ」と考え情報を提供するようにするわけである。そうすれば受け手である利用者は、無駄な情報を見る必要がなくなり、効率よく情報を受けることができる。また、One-To-Oneを利用し、個人のプロフィールを特定するシステムがあるので、それを利用して医療関係者であるかどうかを認識し、それによって医療関係者限定の空間を作ることもできるようになった。

 このシステムの導入は大変な実験だったのだが、製薬企業の中でもこのOne-To-Oneを実際に試してみたいと考える企業が多くあった。そこで、そうした製薬企業との共同実験という形で、1998年にこの世界で最初にBroad Vision社のOne-To-Oneを利用した医療ホームページ「My Medipro」がスタートしたのである。

サービスコードを入手するためにはMRへ依頼する

 My Mediproを両関係者限定の空間にするためには、サービスコードという仕組みを利用する。医療関係者は、製薬企業のMRからサービスコードを入手することができる。サービスコードを持っていれば、My Mediproの会員申し込み画面を訪問して、登録し、会員になることができる。そのため、MRからサービスコードをもらえない一般人は、この空間に訪問できない(図3)。なお、どの製薬企業のMRへ依頼するかは、My Mediproの画面で確認してほしい。

 最近では、「My Mediproのコンテンツを利用したい」「閲覧したい」という目的のために、サービスコードをほしいと希望する医師が増えている。例えば、アメリカ糖尿病学会のハイライトニュースを、製薬企業がサービスとして配信したり、レポートするという場合、その製薬企業のサービスコードをほしいという人たちが殺到した、ということもあった。

 このように、製薬企業も医療関係者も、My Mediproのインフラを活用し、お互いの情報伝達に役立てていこうというのが、My Mediproの基本思想である。なお、サービスコードは複数個、つまり、何個でも集めてプロフィールに入れておくことができる。複数のサービスコードを集めれば、より多くのサービスを将来受け取れることになるので有利であるし、それだけ便利になる。

One-To-Oneで画期的な情報の伝達方式が確立

 インターネット、プラス、My MediproというOne-To-Oneというテクノロジーがあると、利用者にとって、また情報提供側にとっても便利な仕組みを構築できる。提供者側にしてみれば、あらかじめ読者にあった形に整理しておくことができる。例えば、プロフィールを専門分野別に分けられることから、専門性に合った情報媒体を作ることができる。例えば、各種の媒体から循環器の分野のニュースだけを抽出し、インターネットならではのニュース媒体の作成も可能である。これまでの医学総合雑誌などのアナログ媒体ではできなかったことが、One-To-Oneを利用するインターネットシステムでは可能になるのだ。 

 また、製薬企業から「イベントを企画しているが、山形県の医師だけに通知を出したい」というような要望を出された場合、My Medipro事務局から該当する読者に限定しメールを出すことができる。一斉メール配信にかかる費用は非常に安く、例えばターゲットを絞った形で、約1万人分のメール配信を10万円で行うことができる。これは従来の雑誌媒体で行う広告にかかる費用から考えると、信じられないくらい安い費用だ。つまり、My Mediproに参加した製薬企業は、従来の広告や情報伝達では考えられないほど、非常に効率のよい、安価で、しかも速い、医師への情報伝達の媒体を確保したということができるのである。

 情報という無形の財産が貴重になる時代には、その情報をどのように利用者に形あるものとして示すかが重要になる。情報は形ある商品よりも、より加工しやすいものである。それを個人個人の要望に合わせて情報をカスタマイズすることで、ほかにはないシステムを作れるのではないか、と考えMy Mediproでは、こうした新しいシステムを積極的に導入してきたわけだが、これを今後も上手に利用していくことで、これまで想像もできなかった多くのサービス、夢のサービスが作れるのはないかと思われる。

One-To-Oneは利用者にも情報の提供側にもメリットが多いシステム

 My Mediproでは、共通の認証システムを採用しているので、利用者である医療関係者は自分がよく使う1個のIDとパスワードを記憶すればよい。これは覚えることがたくさんあって、複数のIDとパスワードなどは覚えられない医師にとっても、大変に便利なシステムである。

 また、プロフィールの設定で、医師は自分が必要なメールだけを配信されるようにできる。そのため、利用者はスパムメール(Spam Mail)、つまり利用者が望んでいない迷惑メールというのは、原則的に届かない。この機能は製薬企業にとっても大きなメリットがあり、例えば、もし医師がIDとパスワードを忘れたら、So-netに電話すれば対処してくれるので、製薬会社や医学出版社などの情報提供会社は個人情報管理、つまり、IDとパスワードの管理といった煩わしい業務から解放される。

 さらに、セキュリティについても、My Mediproの個人情報の管理についてはSo-netの責任で監督している。SSL(Secure Sockets Layerprotocol)を使っているので、大学からアクセスする人でも、その大学のウェブ管理者にIDやパスワードを盗まれることはない。さらにそれだけではなく、企業秘密だが、もっと複雑な機構を介し、セキュリティを確保している。そのため、提供する製薬企業は個人情報の安全性についても、So-netに委託しているということで、この面についての心配や不安がなくなるわけだ。

 こうして、製薬企業にも医書出版社にも、そして、利用者にも、というように、すべてのインターネット利用者にとってメリットがあり、便利なシステムということが、徐々に理解されてきたためであろうか、My Mediproはどんどん人気が出てきている。最近では、マスコミなどの紙媒体では特に宣伝もしていないのに、現在、毎月約1000人も会員が増えている。この現象を見る限りにおいても、My Mediproの仕組みというのは人気があり、医師、薬剤師のみならず、製薬企業、医学出版社など、医療にかかわるすべての関係者に広く受け入れられ始めている、ということを示唆しているのではないか、と考えている。口コミだけでも十分に会員が増えるというのは、インターネットの世界での人気サイトの条件だが、それが満たされてきているのだと思う。

製薬企業と医学系出版社の協力体制が構築できる

 製薬会社側から「医療関係者限定の空間がほしい」と提案があって、それをきっかけにして、My Mediproを作ったのだが、医書出版社をはじめとする多くの出版系の情報提供会社側も、医療関係者限定の空間をほしかったようである。なぜなら、出版社は製薬会社に広告を出してもらいたいのだが、薬の宣伝はインターネットの世界では、医療関係者限定でないと表示することができない。つまり、医学出版社にとっても、医療関係者限定の空間がないと広告をとれない、広告からの収益を期待できない、という問題があったからである。

 ところが、My Medipro空間ができたことで、多く医学系出版社にとってもメリットを提供することになった。医学出版社と製薬企業の両社が、同じMy Mediproの空間を共有することができるようになったためである。つまり、この空間の中では、医学系出版社と製薬企業が、相互に協力関係が構築できる。医学系出版社がコンテンツプレーヤーとなり、製薬企業がスポンサーとなり、出版社を経済面から応援し、かつ、出版社は製薬企業をコンテンツ面から応援する、という両者にとってメリットの大きい関係が、容易に構築できるようになったのである。

 こうした、製薬企業側と医書出版社側の、両者の立場に立ち、両者にとってメリットが高い関係を構築する、というこうした試みは米国でも、欧州でも、実験されていないようだ。その意味では、My Mediproで作り上げたシステムは、医療分野においては世界で最初の試みといってもよいものであった。しかも、それを。Broad Vision社のOne-To-Oneシステムを利用して構築するというのは、まだ、誰もが経験したことのない、世界で最初の実験だったといってよいであろう。

 そして、その結果はこれまでのところでは大きな成功を導いた。製薬企業だけでなく、日本の医書出版社に対しても、非常によいシステムであると評価されるようになったからである。製薬企業にとっては自社だけでホームページを開発し、そこにたくさんのシステムを載せることよりも、My Mediproと提携することで何倍も価値を産み出すことができ、その費用は、自社だけで開発する場合の10分の1以下であることがわかってきたからだ。また、医学系出版もこのMy Mediproのメリットに気がつきはじめ、協力を惜しまないという会社が増えつつある。このようにMy Mediproが日本の医学社会に提案した実験というのは、広くみなさんに感謝されて利用価値の高いシステムであったといっていいだろう。2000年になり、My Mediproに参加を希望する製薬企業や医書出版も急激に増えてきた。今後、My Mediproの提携会社は、これまで以上の速度で増え続け、100社を超える大きな連合体になっていくだろうと予測される。

医療のために、患者を治すために

 My Mediproは、医師である私がITを使って、広く医療の貢献のために尽くしたと考え始めたのがきっかけで生まれたものである。そして、その基本姿勢は、医療のために、患者さんのために、という根本的な方針で運営してきた。

 それが、4年の歳月を経て、多くの皆さんからの信頼感を得ることができ、大変ありがたいことと感謝している次第だ。So-netの内のスタッフも増え、また、各出版社、各製薬企業の担当者の方々も含めると、総勢で150名以上の方々と連携プレーをとりながら、My Mediproから情報発信をしていることになり、多くの皆様からの期待も寄せられている。その期待を裏切らないようにしなくてはならないし、さらにMy Mediproの正しい利用法を推進し、それにより真の医療システムのレベルアップはもとより、医療業界の各分野における業務支援、業務の改善などの面から、My Mediproが医療界を大きく動かしていける起爆剤になることを願っている。

日本では日本の文化や環境に根ざしたホームページが成功する

 アメリカには、My Mediproのような考え方を持って作られたホームページはない。アメリカでは各社が皆すごいお金をかけて買収劇を繰り返し、競争し、コンテンツプレーヤーも各社ごとに独立して運営し活動している。

 これに対し、日本のMy Mediproのような仮想協力都市空間では、1個のシステムを皆が安い資金で、ITや製薬企業が共同で利用しあっている。こうしたインターネットの利用の仕方の違い、あるいは成功パターンの違いというのは、日本と米国との社会構造の違いに根ざしているといってよいのかもしれない。

 このように「みんなで集まって」という仮想協力都市という考え方は、日本独自の考え方であり、米国人にとってはなじみの薄い考え方かもしれない。しかし、この考えを持って運営したMy Mediproは、その意味では日本の文化に根ざしたインターネットという環境では、非常に効率のよい形であると思われる。

 こういう日本独自のシステムができる芽が生まれ成長することができれば、医療分野ではアメリカのどのホームページよりも優秀な仕組みを作ることができるのではないかと確信するようになってきた。特に最近、米国の会社の医療関連の会社の株が急激に下降しているのは、本当の意味のシステム構築よりも、買収ゲームや株式ゲームばかりに熱中しすぎた結果ではないか、と考えられる。My Mediproでは、米国の状況を他山の石として、米国の模倣ではなく、むしろソニーの技術も利用して、独自の考え方や、独自のシステム開発技術を利用したインターネットの活用というものを、日本だけでなく、世界に対して提案していきたいと考えている。

Mediproには日本の代表的医療関連企業100社以上の集合が予想される

 特に1999年の年末から、My Mediproには、たくさんの民間企業から相談や提案が持ちかけられるようになってきた。私は毎日、嵐のような忙しさになっている。さまざまな医療システムの構築を提案したいという企業が日々、Medipro事務局に相談に訪れる。IT(information technology)関連の予算をすべてインターネットに注ぎ込むという方針を発表している民間企業もあるほどだ。すでに提携の打診を受けている会社だけでも100社を超えるような状況なので、そうした話がまとまれば、2000年度中には、My Mediproに日本の代表的な企業が、すべて集結するという状況になるのも、夢ではないのではないか、と考えている。

 このように、2000年を契機にし、日本でもインターネットは医療の世界を、経済性の高い、効率性のよい世界へと変えようとしていて、そしてその期待が一斉にMy Mediproへと注がれてきているような状況である。

My Medipro Version 2には世界最先端の機能を搭載

 そこで、My Mediproの次のステップを考えている。その基本的な姿勢は単なる情報の発信源になるだけでなく、一度立ち寄ったら、さまざまな仕事に役立つ行為ができる、あるいは友人たちや知人たちとの情報交換ができる、という機能を持つホームページに進化させていきたいと考えている。インターネットのインフラを、生活に関係するさまざまな需要を満たす道具として、あるいは生活の一部として利用してもらえるようなシステムを提案していきたい。

 特に2000年4月からフルモデルチェンジをし、My Mediproの画面やシステムは、全く新しいコンセプトで生まれ変わった(http://www.so-net.ne.jp/medipro/login.html)。それを、My Medipro Version 2と私たちは呼んでいる。そして、そこには約27カテゴリー以上の新機能、さらに、新しいビジネスプランとしては100個以上のプランが搭載されている。その新機能は、毎月1個くらいのペースでどんどん社会に公表していく予定である。

このように、My Medipro Version 2は、世界で最初といわれるシステムを数々と搭載し、世界の模範となるような新しいインターネットシステムを医療の世界で応用していく、ということが最大の特徴になるかと思う。今回の連載からは、今後、My Mediproへと搭載していく予定の多くのインターネットシステムによって、どのように医療システムを変えていくことができるか、といった点を中心に、また、世界の医療におけるインターネットシステムの流れも考慮しながら、さまざまな角度からの提言をしていきたいと思っている。

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