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プラスαのインターネット活用術24

Medical Tribune 2000年7月27日 30ページ ©️医学博士 鈴木吉彦

日本が米国を追い越す時代に(1) 携帯電話利用の成功が好例

 本シリーズ20回(6月22日号)では、インターネットの時代が第3段階に入ったという概念を説明しました。そして、米国は、IT(情報通信技術)関連の第1段階で生まれた不良企業が増えており、それによって不良遺産の処理に苦しむ時代に入っているという状況を解説しました。この状況は、医療分野でも同じような現象として認められます。

米国ではIndexed Pricesが急低下

 インターネットは確かに100年前の自動車の発明に匹敵するか、それ以上の、歴史的なテクノロジーです。しかし、1900年代初頭には3,000社以上あった自動車メーカーが結局は、現在では数社に集約された、という歴史もあります。その意味では、インターネット関連企業も同じように、これから淘汰される運命をたどるのでしょう。そして、インターネット革命の第3段階では、リアル社会の大手企業が、やはりサイバー社会でも強みを発揮するという構図になるだろうと分析する人たちが増えています。あるいは、ベンチャーであろうと、大企業であろうと、利益が出ていることが大事であり、理念がしっかりしていることが大事です。こうした傾向は、日本でも米国でも、ほぼ同じ傾向として動いています。

 先日、日本計画研究所の講演会に参加し、私の講演の次に、デジタルメディカルコミュニケーションズのガイ・ハリス氏が講演をされたので、それを聞かせてもらいました。ハリス氏は、米国の現状を紹介した後に、数種類の米国の医療関連のホームページを紹介しました。しかし、最後に、これら米国の健康医療関連のホームページの価値は、急激に低下しているとのグラフを示していました。特に、健康医療関連の会社は1999年の6月にバブルのような状態で、急激にIndex Prices(会社の価値を図るインデックス)が高くなりましたが、2000年3月からは急激な低下を示しています。これは医療関連のホームページは、盛り上がる時には盛り上がるけれども、利益を上げにくく、それがわかってしまうと、社会の評価は通常の企業よりもさらに下がりやすくなるのだと、私は感じながら拝聴しました。

失敗しても嘘のない企業風土に

 インターネットを新しい技術として活用しようと考えた場合、「やってみなければわからない」という概念がありました。そのためには、誰よりも早くやってみること、やりながら修正していくこと、だめだと思ったらすぐに辞めることが大事であるとされてきました。米国では、」だめだと思ったらすぐに辞めることが、企業家にとってはとても大事なことです。一度、失敗しても、次のチャンスを与えてくれる風土があるので、そこで再挑戦ができるからです。したがって、最初の企業化の段階で失敗しても、そこでうそをついたり、虚偽の報告を投資家にしてしまうと、それだけで信用をなくしてしまい、次の挑戦ができなくなります。ですから、失敗を潔く認め、倒産させる時にはすぐに倒産させる、という経営者が多いのです。

 ところが、日本では過去の成功実績を重要視する風土がありますから、一度失敗すると、次の再挑戦は困難になります。ですから、経営者は潔く経営の失敗を認めることはできず、なんとか失敗を隠そうとするわけです。倒産しないためにはなんでもするという考え方になり、多くの人の前でも平気でうそをつくようになります。

 米国では、弁護士が多いので、そういううそはすぐにばれてしまいます。しかし、日本のベンチャーのインターネット関連企業の経営者は、日本では投資家のレベルが低いので、ばれないだろう、と高をくくっているような状況があります。これは、とても良くない状況だと思います。日本の医療業界においては、うそをつくインターネット関連企業をはびこらせてはいけない、と私は思っています。

欠点排除しメリットの吸収を

 このように、米国と日本では、いろいろな点でインターネットに対する認識なども異なります。ですから、日本は日本の欠点であるような部分については、できるだけ早くメスを入れて摘出し、軌道修正すべきでしょう。そして、米国の良い部分はどんどん吸収し、悪いところは真似をしない、という方向性を持っていけば、日本で生まれたインターネットのシステムは、必ず米国を追い越すレベルになっていくはずです。

 例えば、その良い例が携帯電話を使ったインターネット利用でしょう。これは、日本が電子機器の小型化において、特別な経験や高度の技術を持つ国であることが成功の背景にある1つの理由だと思います。もう1つの理由は、「あいうえお」「あかさたなはまやらわ」の言語の構造が、携帯電話の文字検索の方式に合っていたためではないか、と私は考えています。つまり、日本語は、あ行を探すのに「あ」から始まって「いうえお」と5回ボタンを押せば、元の「あ」に戻ることができます。検索も、ひらがな検索とカタカナ検索を使い分けることができます。しかし、英語では「A」から「Z」までの操作ウィこのような概念で分類し、それを携帯電話のボタンを押すという方式に結びつけるのは難しいのだと思います。

 一方、英語は単語がベースで、単語と単語との間にスペースがあります。ですから、単語ごとの検索性には優れているため、データベースをつくりやすい言語体系だと思います。そのため、米国には、Medlineをはじめ、たくさんの医学文献データベースや医学雑誌のデータベースなど、検索生の優れた医学系検索エンジンの種類が多いでしょう。

文化に根ざした新システムが必要

 米国の医療関連のホームページを運営している企業を訪問すると、医師が携帯する携帯端末を開発しよう、というアイデアが提案されることがあります。しかし、わが国には携帯電話があり、記憶媒体としてのメモリーティックスがありますから、そんなことは朝飯前になります、と話をすると、みんなが驚いた表情を見せるようになりました。最近、私は米国の医療関連の会社を訪問し、彼らの話を聞き、そこで日本の最先端技術を紹介すると、だれもがびっくりします。

 Mediproについても、70社が1つのホームページの中で協力し合っているということも驚きだと言います。米国ではルールがあって、そこから自由競争をします。ですから、みんなが同じようなホームページを競ってつくるようになりやすく、結局は同じようなもので、似たり寄ったりのレベルの内容のホームページがたくさん生まれるだけ、という現象になりやすいのだと思います。これに対し、日本では競争しながらみんなが相談し、仲良くルールをつくってゆきます。ですから、みんなが協力関係をつくりながら、1つに集まるという、Mediproのような仮想協力都市空間(virtualcooperation city)を構築することが可能になりやすいのだと思います。

 ですから、最近、私には米国の医療関連のホームページが、他山に石には見えても、あまり参考になるホームページがないように思えてきています。それだけにこれからMedi-proには、世界でもだれも実験したことのない、レベルも世界最高で最新のインターネット技術を搭載していこうと思っています。また、リアル社会での実績がある大手企業からの提携の話もあり、日本中の最先端のインターネット技術をMediproという空間に搭載していくことが可能になれば、素晴らしいことでしょう。それによって、多くの医療関係者が、役立つ情報を迅速に探すことができるようになったり、必要なときに必要な情報が入手できるようになったりすることが大事だと思います。

 医療の世界のインターネットにおいては、日本は、もう米国真似る必要はないだろうと考えています。米国の真似をするのではなくて、本当に、日本の医療業界において、日本の文化に根差したものをつくるべきですし、医療水準のレベルの向上や業務支援に役立つシステム、あるいは患者教育に役立つシステムを構築すべきであり、そのためには独自のアイデアで、独自のシステムを考えるべき段階にあるのではないかと思っています。

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