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ドクターのためのインターネット講座 第22回

第22回 オンラインで買い物をする時の注意

MEDIAPEX インターネット進化論 1999年11月1日 第206号 ©︎鈴木吉彦 医学博士

オンラインショッピングへの疑問点

 弱者を狙った詐欺というのは、実社会でも、オンラインでも起こりえます。代金を支払ったけれども、店が存在しないという詐欺的商法が起こることが心配されます。偽物をつかませる心配もあります。一般の実在のショップでも、偽物を買わされることはありますが、オンラインショップは実際の店舗ではないことを考えると、引っかかる確率は、さらに高いと考えたほうがいいでしょう。また、注文した商品が到着しない、違う商品が届けられるということもあります。

 特に病気をもっている人は、身体に自由がきかないのをいいことに、だまされやすいかもしれません。また、返品制度なども、実社会の通信販売と同じようにクーリングオフというシステムがオンラインショッピングでも確率されているのか、などの心配があります。

 クレジットカード番号を知られたら、悪用される危険は高いので、注意が必要です。クレジットカード番号をどう守るかも、身体が動かないと防御するのが大変です。患者さんの名前を使いなりすましたら、などの心配もあります。

 こうした問題は、憲法で保障されている通信上の機密保持が障害になり、法的な整備が進まず、未解決のままであることが多いのです。ですから、法律に守られることを期待するだけでなく、インターネット利用者が、自己責任、自己防御の意識を強く持っておく必要があります。問題になっても困らないように、ホームページ上でのやりとり、電子メールがあればその記録、銀行振り込みをした場合にはその伝票を控えておくようにします。

オンラインで薬を販売する危険性

 米国では、ホームページから薬剤を購入できるオンライン薬局が生まれています。しかし、一部のオンライン薬局や医師の業務は、消費者の医療履歴を調べずに処方したり、国外から認可されていない薬を販売したりと、消費者に重大な危害を与える可能性があると米連邦取引委員会は指摘しています。処方薬のオンライン販売の急速な拡大は、消費者を保護する法律の変更を迫るかもしれません。ですから、米連邦取引委員会は、オンライン処方医師やオンライン薬局などでは身元情報を明確に公開することが必要であると指摘しています。

個人輸入についての問題

 日本での販売が認可されていない薬剤でも、医師や患者さんが、個人の責任のもとに輸入するのであれば、入手できるという場合があります。まれな病気の治療に使われる薬剤や試薬などを利用したい場合、この方法が利用されます。

 例えば、日本では未だ100人しか報告されていないような病気を疑われる患者さんがいて、その病気の診断には、どうしても特定のホルモンを使った検査をしなくてはいけないという場合に、医師はそのホルモンを製造している海外の会社に依頼し、日本へ送ってもらうしかない、といったケースです。

 しかし、この仕組みを利用すると、日本で未認可の薬剤を海外から取り寄せ、不特定多数に売ってしまう、というビジネスも成立してしまいます。こうしたケースは法律の改正などの問題と絡み、今後、クローズアップされるでしょう。

毒物を紹介しているホームページ

 個人のホームページで、毒物や劇物になりえる市販薬品を紹介しているホームページもあります。大学の研究論文、学会での発表論文、薬品メーカーの資料などをインターネットで公開している場合もあります。一般人には普通は読むことが奨められない詳しい薬物についての内容が、簡単に読めてしまうことは、問題です。一般公開が禁止されている薬剤の薬効や副作用などの情報だけならともかく、その入手法などが書いてある場合は危険です。危険な薬剤を、もし一般個人が「販売」しているようなホームページがあれば、薬事法違反です。

 また、自殺願望のある患者さんや安楽死、尊厳死願望のある患者さんが、互いに情報交換をするホームページが、「ドクターキリコの診察室」というホームページで有名になりました。その事件では、ホームページ主催者が、ホームページで知り合った人たちに毒薬を販売して事件が起こりました。この件については、薬事法上でも問題ですが、こうしたホームページの内容を読むことで、難病をもつ患者さんが、自殺をしたい気分にならないか、という点も大変な問題となっています。

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