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医療とコンピュータ (株)日本電子出版 Vol.12 No.4 2001.4 ©鈴木吉彦 医学博士
コンテンツパッケージ構想を発表してから、業界の各方面からの反響が大きいので、今回も連載を続けてみたいと思います。
コンテンツパッケージの利便性
Mediproには単独商品としての情報サービスが多く存在します。しかし、各サービスを利用するためには、各々のサービスに複数回、申し込み手続きを行わなくてはなりません。医療関係者にとっては、それが、大変に面倒な手続きです。また、一つずつの情報コンテンツを一つずつ購入すると、結局は合計の価格は高くなっていきます。
さらに、Medlineや医学中央雑誌はインターネットが出現する前では、20万円から30万円のCD-ROMで発売されていました。こうした問題を一掃し、インターネット上において、一回の登録で、医学に関する役立つ情報コンテンツが、一度に申し込みが可能になるというサービスを、コンテンツパッケージ構想と呼びます。この構想を、日本で初めて実施したのが、Mediproにおける、コンテンツパッケージ(A)、(B)、(C)です。各々のコンテンツには、特徴があり、それぞれの情報が、パッケージとして相乗効果を持つような形で組み合わされています。
コンテンツパッケージの内容
コンテンツパッケージの内容については、図1を参照してください。
まず、コンテンツパッケージの基本的なコンセプトは、例えば、医師であれば、10人中9人が欲しがるようなコンテンツが、Mediproの課金システムの中に、集まっている点に特徴があります。この企画によって、例えば、インターネット上に教科書があると、検索機能という機能を利用することが可能になります。必要な時に必要な事項だけを調べることが可能です。自宅だけでなく、病院からも医学関連の代表的な教科書が常に読める環境があるのです。これは臨床家にとっては、大変に役立つことです。
米国では、医師は最近患者さんを診察しながら、インターネット上での教科書やガイドラインをチェックし、それをもって治療に反映しているという話を聞きます。
日本でも、将来は、米国と必ず同じような現象が生まれることでしょう。つまり、Mediproのコンテンツパッケージを臨床の現場で参考にしながら、治療をする、ということが実現可能になるはずです。
具体的には、医学的教科書の大集体を選ぶのであれば、コンテンツパッケージ(A)か(C)か、あるいは、両方に申し込むという方法があります。コンテンツパッケージ(A)には、医学中央雑誌パーソナルWebなどの日本語文献の検索機能(図2)や、ハイパー臨床内科(中山書店)などのコンテンツがあります。コンテンツパッケージ(C)には、「今日の診療」(医学書院)があります。(図3)特に、「今日の診療」の中には、治療指針2000、治療指針1999,診断指針、整形外科治療指針、小児治療指針、救急治療指針、臨床検査データブック1999-2000,治療薬マニュアル2000などの教科書が、集まっています。これらを、一つずつでも、全部まとめてでも、いずれも全文検索が可能です。ですから、コンテンツパッケージ(C)は、タイトル数が少ないようですが、実は、教科書の数としては、非常に多いコンテンツなのです。また、コンテンツパッケージ(B)は、MEDLINEを利用したい人向けにCOS版MEDLINE, Aries版MEDLINE,PaperChase版MEDLINEという、海外でも有料で提供されているMEDLINEを3種類を集めて、提供をしています。このMEDLINE利用希望者人口は、非常に多いため、コンテンツパッケージの中では今は、最も多い会員数を持っています。また、歴史も古く、約4年間のサービスの実績を持っています。(図4)
いずれにしても、どのコンテンツパッケージについても、人気は確実に伸び、着実に会員数が増えています。特にコンテンツパッケージ(A)や(C)は、最近登場したばかりですが、人気が高いパッケージです。医師のみならず、薬剤師、ナース、栄養士と、多くの職種の人たちにこの、コンテンツパッケージの存在が告知されていくことでしょう。
「ペーパーレス」は当然の時代になります
このコンテンツパッケージ構想は、情報提供側である出版社の方々にとっても、大きなインパクトのある企画です。これまでの日本の医学系専門書籍出版において、競合他社の複数の医学コンテンツが肩を並べて、パックにして、それをネット販売するという形は、誰も考えたことが無かったアイディアだったのです。実際にこういう形が、本当にインターネットで人気のある情報販売の形となるのかどうか、不安がいっぱいだったというのが、実際の企画段階では出版社側の担当者が抱く本当の気持ちだったのです。ましてや、競合他社のコンテンツと同じパッケージの中で、うまくすみわけができるのか、というのは疑心暗鬼だったはずです。ですから、コンテンツパッケージ構想の成功が、これからの日本の医学系コンテンツの販売方針を考えるための重要な役割を持っているということを誰もが認識していました。特に、最近では、ペーパーレスは当然で、次は無線インターネットが普及し始め、コードレスの時代を迎えようとしています。
インターネットも常時接続の定額制になり、高速化が進みます。それによって、これまでの雑誌や薄いパンフレットでさえ、邪魔という感覚が生まれてきています。
つまり、インターネットによって、医学的なデジタルコンテンツにアクセスできることは、医療関係者におけるペーパーレス社会の到来に拍車をかけることになっていくことでしょう。
そのような社会において、厚さ数センチもする電話帳のような医学系教科書の書籍は、その価値が急激に低下してくるのは、仕方がないのかもしれません。特に重いもの、形が大きくかさばるものは、次第に医療業界においても、情報提供の市場から姿を消すはずです。ですから、Mediproにおけるコンテンツパッケージの成功は、広い意味ではアナログからデジタルへの、社会のニーズが移行している事を象徴していくであろう、と言って過言ではない、と思います。おそらく、この流れは、インターネットの接続環境が、常時接続が普通になり、かつ、高速インターネットが普及し始める、今年の夏くらいから、急激に加速度がついて、加入者が増えてくるだろう、と考えられています。