My Medipro

第3回 サービスコード

医療とコンピュータ Vol12 No.1 2001.1 57-59ページ ©️鈴木吉彦  医学博士 

これまでの製薬企業が行っていたシステムの基本姿勢も大切にし、新しいOne-to-One技術も活用していくためには、細かい注意が必要だった。まず、医療関係者である事の定義を製薬企業といっしょに考え準備する必要があった。それを定義するための議論だけでも数ヶ月を要した。幸い、多くの製薬企業からの信頼を得て、ルールを定め、そのルールに従った形で、医療関係者に限定した特別なパスワードを配布する事とした。それが、多くの人たちから「サービスコード」と呼ばれる会社ごとに特定したパスワードである。原則的に、そのサービスコードは、製薬企業のMRが医療関係者に手渡しで配布するものである。

サービスコードをもらい、製薬企業からの情報サービスを受ける権利を取得する

 サービスコードは、提携する製薬企業が個々に定める会社ごとのパスワードである。それを医師や薬剤師に製薬企業のMRが手渡しをする。それを受けた利用者は、MyMediproへの登録において、最初の登録時に、IDと自分がよく利用するパスワードの他に、第2のパスワードとして、サービスコードの記述を求められる。きちんとサービスコードを記入できれば、医療関係者としてMyMediproの会員になる資格を有する。逆に、そのパスワードを持たないとMyMediproの会員にはなれない。だから原則的に会員になるためには、製薬企業のMRへ、サービスコードを入手したいという希望を出す必要がでてくる。

 製薬企業のMRは、医師からの要望に従って、自社に独自のサービスコードを手渡す。このコードは各社の情報サービスに直結しているため、そのコードを手渡す事は、イコール、その企業からの情報サービスを受ける権利を医師に手渡している事と同義である。医師から見れば、自分の意志で、その製薬企業からのサービスを受けたいという希望をだした事になる。

サービスコードに続いて、プロフィールを登録

 MyMediproに登録できると、直ぐに利用者にプロフィールの登録が要求される。プロフィールを正しく記入すれば、それに合わせ画面が変わるので、利用者は、その利便性を得るため正しく記入する。例えば、電子メールを正しく記入しないと、役立つ配信サービスを受けれないから、正しく記入する人が多い。専門分野を正しく指定していないと、それに合わせた画面が最初にでてこないので、正しく記入する。記入が正しいと、それに合わせたリンクをもつ表示が、ラインごとに意味を持ち、MyMediproの画面に表示される。つまり、MyMediproでは、利用者のプロフィールに合わせ、One-To-Oneサーバから設定にしたがい、利用者の画面に情報を提示する。プロフィールは、利用者個人個人によって違うわけだから、MyMediproが表示する画面もひとりひとり異なる画面ができてくる。これにより個人個人が「わたしだけのホームページ」を持つような感覚で情報を人手できるようになる。そのため、この新技術をもつホームページは、Mediproではなく、MyMediproというタイトルのホームページにした。なお、この技術はSonyが開発した技術を加えた新システムであり、独自の特許を申請している。

サービスコードは、製薬企業の会員を見極めるパラメーター

 サービスコードをもつ利用者は、製薬企業からのサービスを受ける権利を持つためのパラメーターを持つ利用者である。このパラメーターを持てば、その医療関係者は、製薬企業が対象者を限定した形で提供するサービスを、特典として受けることができる。例えば、2000年6月に行われた米国糖尿病学会のハイライトニュースは、武田薬品、あるいはノボノルディスクファーマ社のサービスコードを持つ医療関係者だけが、電子メールでニュースを受けられるし、かつホームページ上でも閲覧できるように設定していた。つまり、ハイライトニュースというサーピスは、上記2社のサービスを持つ人だけ受けて、持ってない人は受けられない。サービスコードを持っている人は、それだけ嬉しいサービスを受けたとして感謝する事になり、持っていない人は悔しい思いをしたと感じる。サーピスというものは、誰もが受けるサービスであれば、受けた人は、それほど感謝しない。しかし自分だけが特典として受けるのであれば、その分、感謝の気持ちが強くなる。つまり、サービスコードの配布というのは、製薬企業が提供するサービスの価値をより高めるコードだと考えればよい。

 また、医師は自分の専門分野に特化したサービスを受けたいという希望がある。特化すればするほど、専門性の高い、深い内容の情報サーピスを受けるようになる。だから、このシステムは、専門性について深い情報サービスを受けたい人は、より優れたサービスを受けるためのシステムと理解されたい。その意味では、医薬品などの販売のように、専門性の高い医師をターゲットランクの高い顧客と考えている製薬企業にとっては、サービスコードは必要なIT機能である。それを反映してか、すでに2000年10月には、日本で大手製薬企業と呼ばれる企業の多く(約38社)が、2001年4月までには、MyMedipro参加を表明している。

 また、アメリカやカナダでも、この独自のアイディアを医療サイトの機能として採用したいという要望がある。その意味では、MyMediproでの成功は、MyMediproが世界の最先端を走っている事を証明したものとなる。 

製薬企業は、IDとパスワードを管理しない

 製薬企業は、MyMediproの提携企業になると、個々に医師にとパスワードを渡す必要はなくなる。各社は、ひとつの固有のサービスコードを渡すだけである。もし利用者である医療関係者がとパスワードを忘れた場合には、MyMedipro事務局が対応する。この為、提携している製薬企業は、認証という手間がかかる作業に煩わされない。MyMedipro事務局に委託し、本来の医薬品情報の提供や営業用のサービス事業に専念できる。また、コンテンツプレイヤーである医学系出版社は役立つコンテンツを提供し、製薬企業がそれをスポンサーとして支援し、コンテンツ提供と医薬品宣伝という形での、2種類の情報を、医療関係者に届ける事が可能になる。

医療関係者はサービスコードを複数、集める

 多くのサービスを広く受けるためにも、サービスコードは、複数個、集めるのが薦められる。このようにして、よく利用する薬剤の製薬会社のサービスコードを記入しておけば、普段利用する薬剤に関する多くの情報が収集しやすくなる。なお、サーピスコードは最低1個を入力すれば、 MyMediproの会員でありつづけれる。登録したサービスコードは、そのままプロフィールに登録され続けられる。2回目の訪問からは、毎回、サービスコードを記入する必要はない。

医療関係者限定空間を、出版社が活用

 製薬企業のMRが、手渡しという作業で築いた医療関係者限定空間であるMyMediproは、日増しに、その価値を高めている。既に約5万人の医療関係者が登録を済ませている。特に大きな宣伝をしていないにも拘わらずロコミで、会員が増えている。その結果、日本で最大級の医療専門向けサイトとして評価されている。また、宣伝をしなくても、各種の紙媒体で私が連載ができたり、講演会が多かったり、という形で、様々な形での告知ができている。インターネットの世界では、ロコミで広まるサイトが本当の実力を持つ、と言われている。その意味でもMediproとしては、ロコミで広まるだけの高い価値をもつサイトにする方向に注力している。

 この医療関係者限定空間を、2000年10月から、医学系出版社にも活用してもらうことを発表した。つまり、この空間の中だけに限定しコンテンツを置いてもらえば、医療関係者以外の人の目に触れないので、医療専門家同士だけに向かった情報提供が可能になる。これは、紙媒体でも、医療専門紙だけに掲載が許可されている状況と同じ媒体の価値をもつことになる。だから、医療専門紙にある情報、広告などは、ここでは自由に提供が可能になる。出版社にとっては仕事の活動において広く自由度が高まるのである。つまり、医療専門紙出版社としての本領を発揮できる。この構想については、多くの医書系出版社から賛同の表明があった。このように、MyMediproは、製薬企業のみならず、医書専門出版社も含め、日本にある多くの医療情報提供に携わる人たちへの支援となる事を心がけ、インターネット技術や独自の情報提供のモデルに磨きをかけてきた。

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