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第2回 Medipro にOne-To-One技術を採用

医療とコンピュータ (株)日本電子出版 Vol11 No.12 2000.12 ©️鈴木吉彦  医学博士 

Mediprolはみんなのポータルサイト Mediproをみんなのものに

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第2回 Medipro にOne-To-One技術を採用

医療とコンピュータ (株)日本電子出版 Vol11 No.11 2000.11 ©︎鈴木吉彦 医学博士

Medipro (http://www.so-net.ne.jp/medipro/)は、日本の代表的な出版社や製薬企業が集結して情報を提供している、インターネット上での仮想協力都市空間です。日本や海外における医学情報は、Mediproだけで十分すぎるほど、見つけることができます。現在、4万人以上の医療関係者が会員になっています。

情報量の増加に伴い、通常システムでは、上手に情報入手できない

MeciproはVertical portal site (Vortal site)の特徴を持つ。しかし、それでも日々提供される情報量が多くなると、受け手側はそれを整理し、入手するのが困難になってくる。特にインターネットを入手するのは、パソコンの画面からであるのがほとんどである。パソコン画面は15インチとか、17インチという物理的な制約がある。つまり、専門性の高い医療情報は、制約された狭い空間において自由なレイアウトが難しい状況下で、情報提供されなくてはならない。その結果、利用者は、自分に必要な情報だけを整理した形で提供してほしいと望むようになる。

一人一人にカスタマイズした陳列の仕方を工夫する

上記のような役立つ情報を通常システムでは上手く提供できない、という問題を解決するため、One-To-Oneという概念を採用した新システムが提唱されるようになった。これは、 1996年頃からアメリカで提唱され、日本で導入されはじめたのは1997年頃からである。日本では、リクルート、ヒューレットパッカード、松下電器など大手企業がいち早く導入し 実験を始めた。しかし、いずれの実験も、いわゆるvortal siteでの実証ではなく、一般向けサイトでの実験だった。しかし、コストがかかりすぎ、効果があがらず実験を中断したサイトも多かった。

この頃、ソニーグループでも、One-  To-One概念を採用しようという動きがあった。しかしソニー全体の戦略とするのは、危険性が高かった。そこで、対象を絞るという意図から考え、利用者を絞って価値が高い専門サイトから実験をしようという事になった。そこで白羽の矢がたったのがMediproだった。 

医療分野における情報提供に、One-To-Oneは医師にとって不可欠 

医療分野は専門性が高く、分野も、多岐に渡る。ある分野の専門家は、その分野だけの専門知識を深く掘り下げたいという要望が強い。例えば、私のように糖尿病の専門家は、糖尿病とは関係のない分野の知識には関心が少ない。糖尿病の情報だけが欲しい。つまり、医師にとっては専門分野の知識を優先させ、専門分野でない知識は、できれば表示してくれないほうが有難いと感じやすい。だから、私が医師の立場で考えれば、One-To-OneはMediproには不可欠の機能だと確信できた。

One-To-One技術は製薬企業にとって不可欠の技術

One-To-One機能を利用すれば、例えば、医学の情報内容を専門分野別に整理し表示できる。例えば、利用者が循環器関連の医師であれば、循環器に関係する情報、例えば循環器に関する文献資料、薬品情報などを優先的に表示することが可能になる。

また、地域別に情報を整理し、各地域で行われる講演会や研究会の案内も、必要な人に向け情報提供できる。例えば、北海道の研究会の案内は、北海道の利用者だけに表示される。これは製薬企業などが、医師向けのサービスとして欲しかった機能である。糖尿病の薬剤を販売したい製薬企業は、糖尿病の医師にターゲットを絞って営業をしたいはずである。つまり、製薬企業側の立場になれば、One-To-One技術は不可欠のシステムになる。

世界中で注目されていたOne-To-One、しかし、、

1997年当時、世界中の代表的な医 療関連ホームページでも、One-To- One 概念の導入が検討された。アメリカでも、One-To-Oneを導入しようとした医療サイトはあったが、アプリケーション維持にかかる費用が莫大であることから、多くの会社では断念したようだ。

その頃、Mediproでは、採用するアプリケーションの選別を行っておりアメリカ西海岸サンノゼにあるBroadVision社のアプリケーションを採用した。現在は、このアプリケーションは、代表的なアプリケーションとして多くの金融サイトなどで採用されている。しかし1997年当時は、その価値を評価する人は少なく、その意味でMediproにおける採用は大きな挑戦と受け止められた。

One-To-One技術を活用して、社会の問題に解決策を提案 

One-To-Oneを採用する際、注意した事は、これを採用する事が目的ではない、これを採用する事は手段なのだ、という意識をもつ事だった。One-to-Oneは、あくまで一技術であり、その技術を社会にどう役立てるかを考える事が重要だった。この命題に対する回答を見出すだけでも約半年の歳月を要した。

1997年当時、社会的に解決すべき課題であったのは、医療関係者限定空間の構築というテーマだった。特に医薬品情報は医療関係者限定空間でなければ情報提供できないという行政側の指導があり、その問題を解決できるホームページがなかった。その為、MyMediproの一機能として医療関係者限定空間の構築に、このOne-To-One技術を応用する事が役立つと判断した。その為のビジネスモデルを構築し、社会に対し解決策(ソリューション)として提案した。

医療関係者である事を識別するためにOne-To-Oneを利用する

医療関係者と、医療関係者でない事を、インターネット上で厳密に識別する事は不可能である。誰でもアクセスでき、かつ遠隔的にしか確認できない空間での、本人識別というのは、1997年当時は不可能とされていた(ただし、今後、生体認証などの技術が発展すれば、識別が可能という時代が到来するかもしれない。)  その為、医療関係者である事を証明 するには、インターネットではなく、 現実社会での確認が必要であると考えた。

1997年当時、多くの製薬企業は、 会社に固有のパスワードやIDを定め、 それを紙に印刷したものを、MRが医 師に手渡しで供給していた。このシ ステムはMRが医師あるいは医療関係 者である事を確認した相手にしか、 アクセスを許可しないというシステ ムである。日本における医療関係者 の特定には有効なシステムとして既 に普及していた。この方式で先陣を切った万有製薬のホームページには、約1万人以上の医療関係者がアクセスし、会員となっていた。万有製薬は1番手としての先行者メリットを得た。

しかし、このシステムは2番手以降の製薬企業が医師にパスワードやIDを渡すという時には、医師に迷惑を与える事になる。医師側は異なる製薬企業から異なるIDやパスワードをもらい受けるが、その数が多くなるにつれ、覚えてはいられなくなるからである。実際、筆者も約5社以上の製薬企業から別々のパスワードをもらったが1ヶ月以内に、ほとんどを忘れてしまった。そして本当に情報がほしい時には薬品情報を探せない、という事態に陥った。このように多くの医師は、何のために製薬企業からIDやパスワードをもらったのか分からなくなる。そこで、1997年当時、多くの製薬企業が抱えていたこの問題を、One-To-Oneを利用し解決しようと考えた。

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