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プラスαのインターネット活用術41

Medical Tribune 2000年12月7日 34ページ ©︎鈴木吉彦 医学博士

コンテンツパッケージ構想はCD-ROM問題を解決(1)

 前回、Mediproのコンテンツパッケージ(A)の解説のなかに、医学中央雑誌のCD-ROMは1セット33万円と書きましたが、後で調べてみるといろいろなパターンがあり、私が概算で覚えていた数字ではなく、実はもっと高い値段でした。35万円から156万円という、とても個人で購入できるような価格ではなかったわけです。こんなに高価なら、個人で購入して気軽に使っていた医師はほとんどいなかったでしょう。その他の医学系のCD-ROMも、だいたい数万円と高額です。

 これらCD-ROMとして発売されていた医学系コンテンツが、なぜ現在、Mediproのコンテンツパッケージ(A)という形で集結したのでしょうか。そして、それによって、なぜ個人が購入できるレベルにまで価格が下がったのでしょうか。今回と次回では、その背景について説明したいと思います。

制作・流通コストを削減できる

 コンテンツパッケージ(A)には、医学中央雑誌Web版の他ほかにも、今日の治療薬、ハイパー臨床内科、最新医学大辞典、歯科医学大事典、Medical Tribuneなど、これまでのCD-ROMをベースにした媒体が中心に集結しています。これらのCD-ROMがどんどん売れていれば、各出版社はあえてインターネット化する必要がなかったはずです。ところが、多くの医学系専門出版社が、CD-ROMからインターネットシステムへ切り替えたいと希望しています。

 その理由の1つには、CD-ROMの制作が非常に大変だということがあります。まず大きな問題として、MacやWindowsの問題があります。このOSの違いやversionの変更によって、昔のCD-ROMは使えなくなることがあります。あるいは、Y2K問題のときには、それまで使えていたCD-ROMが利用できなくなったり、バグが出たりしました。しかし、インターネットで製作すれば、その心配はありません。製作に掛かる作業も、大幅に削減することができます。また、流通に掛かるコストも必要なくなります。決済もネット決済ですから、人手を介することなく、自動的に各医学系出版社の銀行にso-netから振り込まれます。CD-ROMの場合は在庫の回収の心配もありますが、インターネットならそれも不要です。在庫回収に掛かる人件費の心配もなくなります。

最新情報が追加できる

 CD-ROMでは最新の情報を追加できないことが問題です。例えば「今日の治療薬Web版」では毎月、新薬情報が追加されます。書籍やCD-ROMでは毎月、改訂版を出版することはできません。特に発売されたばかりの新薬の情報が欲しい場合には、パッケージ(A)の「今日の治療薬Web版」で、すぐに探せるわけです。これは、特に臨床現場の薬剤師にとって非常に便利な機能となるでしょう。

 また、年度版のCD-ROMであれば、各年度ごとに、その都度CDドライブに入れなくてはなりません。実は、これが大変に面倒だったわけです。インターネットでは、何年分ものデータをまとめて検索できるというメリットがあります。今後、Medical Tribuneの各年度の全文検索エンジンをつくることを予定していますが、それも年度ごとに検索する必要がなくなるでしょう(ただし、完成は未定です)。特に便利なのは、文献検索の場合です。医学中央雑誌のWeb版では、数年度分、単年度分という具合に、自由に年度を切り分けしたり、まとめたりして検索できます。CD-ROMを1枚1枚差し込む手間がいらないわけです。一度インターネットで医学中央雑誌Web版を使うと、CD-ROMは面倒で使う気になるなくなる、という人もいます。

 さらに最近、小型化するノートパソコンの普及によって、CD-ROMに大きな問題が生じています。私は、VAIOなどのノートパソコンを利用していますが、CD-ROMドライブが外付けのため、いちいちCD―ROMドライブを接続するのが面倒です。ましてやPCカードスロットを利用して接続するタイプのノートパソコンだと、私はインターネットにEthernet Card を利用していますから、どちらか一方しか利用できなくなります。つまり、CD-ROMを利用しながらのインターネット利用は不可能なのです。そうなると、必然的にCD-ROMの利用頻度が少なくなるわけです。

著作権が確保できない

 また、CD-ROMを販売する医学系専門出版社側にとっても、最近、非常に困った問題が起こってきました。それは、CD-RというCD-ROMを簡単にコピーできてしまう装置が、3万円前後で購入できることです。このCD-Rを使うと、CD-ROMで販売されていた商品が何枚でもコピーできるのです。そうなると、従来は10人の顧客があったCD-ROM商品の場合、1人が正規商品のCD-ROMを購入し、9枚分をCD-Rで複製し友人に配れば、それで10人が利用できるようになります。もちろん、これは違法行為です。しかし、それを出版社側が止める手段を講じるのは非常に難しい、というのが現場らしいのです。

 さらに、そこに追い討ちをかけるのが、DVDという媒体です。DVD-ROMについても、コピーが可能なDVD-Rという装置が普及してくることでしょう。最近では、DVD-ROMを主体とする辞書なども増え、そこには画像や音声、動画などが使われています。ですから、医学系出版社としては、CD-ROMビジネスに固執しているわけにはいかなくなったのです。次は、DVD-ROMを利用した新しい製品を生み出さなくてはなりません。そうなると、古いメディアであるCD-ROMは、邪魔な存在になってきます。医学中央雑誌についても、これまで年度版という形で何枚も必要だったCD-ROMが、大容量のDVD-ROMに代わるかもしれませんが、もしDVD-Rなどにより、コピーされるようになったら大変あことになります。多くの医学系コンテンツの商品価値は一気に下落し、日本中にMEDLINEや医学中央雑誌、各種の医学系マニュアルを一堂に集約したDVD版のコピーや海賊版があふれることでしょう。これは日本の医学系デジタルコンテンツの価値をすべて消滅させてしまうくらいに大問題なのです。

 そんな事態にはなり得ないと思うかもしれませんが、現在、米国ではMP3という音楽ファイルが無料で交換、ダウンロードされていることに対する著作権が大問題になっています。ですから、デジタル媒体の普及による著作権の確保ができないという問題は、日本の医学系出版界でも、対岸の火事ではないのです。

 このように、CD-ROMビジネスには、将来に大きな危険がはらんでいます。現在ではまだ、パソコンの普及率が伸びているので、CD-ROMビジネスが完全に消えるようなことはないでしょうが、上記のような時代の流れに移り、一般消費者がCD-Rを普通に利用したり、DVDを利用したりするようになると、ある時期から突然にこうした問題が多くの医学系出版社のCD-ROMビジネスを圧迫することでしょう。ですから、医学系出版社には、たとえ現在、CD-ROMの売り上げが伸びていたとしても、現行方式のCD-ROMビジネスを数年のうちには廃止したいという考えがあるようです。

問題解決で利便性向上

 インターネットを活用すると、上記のような問題はほとんど解決できるでしょう。まず、最新の情報の更新は、非常に簡単です。各出版社から電話回線で、So-netの特定のサーバにFTPという仕組みを使ってファイルを送るだけで、最新情報を利用者に届けることができます。また、「今日の治療薬Web版」については、コンテンツパッケージ(A)の会員には最新の医薬品情報を電子メールで配信するという計画も、南江堂にあります(現在、検討中)。そうすれば、薬剤師や医師は非常に便利に感じることでしょう。

 次に、OSの心配も、ほとんどありません。検索システムの場合には、ブラウザーに依存することは少ないのです。つまり、利用者への負担はほとんどないと言ってよいでしょう。また、出版社側にとっても、データベース作成に掛かる手間がかなり楽になります。CD-ROMのように、媒体を書店まで流通させる費用や、バグが出たときの修正費用の負担がなくなります。

 だからこそ、インターネットでは、非常に安い価格で提供することが可能になります。医学中央雑誌、MEDLINEのほか、数万円もする医学系CD-ROMを10種類も合わせて月額2,980円、年間約3万円です。この値段は、上記のCD-ROM1種類分に相当します。その意味では、コンテンツパッケージ(A)の価格は、CD-ROMの価格と比較すれば、20分の1から50分の1になったと言ってよいでしょう。定額制インターネットの普及によって、今ではインターネットの接続には電話代を気にする必要がありません。インターネット接続プロバイダーも、接続料金を定額制にしています。ですから、両方を申し込めば、電話代を心配せずに、いくらでも検索をしたり、調べ物をしたりすることが可能です。これに慣れると、自宅からMediproを通じて、MEDLINEや医学中央雑誌などの各種データベースが、自由に使いこなせるようになるわけです。つまり、こういう環境下になれば、CD-ROMのドライブを外付けしなくていいわけです。私の場合、CD-ROMはソフトのインストール時に使用するだけになり、最近では極端に利用頻度が減っています。代わりに、すべてをインターネットから調べるという生活に変わってしまっています。

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