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プラスαのインターネット活用術45

Medical Tribune 2001年1月4日 27ページ ©鈴木吉彦 医学博士

2001年は高速インターネット化が必至

ケーブルインターネット、DSLが普及

本格的な定額制インターネットの時代、高速インターネットの時代が始まりました。ISDNの加入者は急増しており、2000年でインターネット接続の25%を超え、既にモデムによるダイヤルアップの接続は半数以上になっています。しかし、一方ではISDNでは物足りず、より高速でかつ定額制インターネットのほうに関心が移りつつあります。現在のところ、個人利用向けの選択枝はケーブルインターネットかDSLかの2種類です。

ケーブルテレビ(CATV)の同軸ケーブルをインターネット用として利用するシステムの加入者は2000年3月には21万6,000人と報告され、その後も急激な勢いで伸びています(インプレス『インターネット白書』より)。病院や施設内でのLAN環境と同じ使い勝手のサービスが受けられます。電話代は一切、気にしなくてよいので、インターネットはいつでも使い放題です。

もう一方の選択肢が、DSLという技術です。これは1980年代に、ビデオオンデマンドを実現する技術として開発されました。90年代に地域電話回線の規制緩和が各国で進められたことにより、DSL技術は、光ファイバーアクセス網を補う高速インターネット用技術として利用され始めました。DSLにAがついて、ASDLと呼ばれることがあります。Aはasymmetricも頭文字で、インターネットサーバへアクセスするための上りと下りとの速度がasymmetric(非対称)であるという意味です。通常、下りが速く、上りは遅いのが普通です。2001年には、200から600kbpsという従来のISDNの5倍から10倍の速度を定額料金で利用できる生活環境が広まっていくでしょう。なお、DSLがCATVと異なるのは、通常の電話回線網を使えるため、マンションなどでも利用できる点です。So-netをはじめ大手インターネット接続業者はDSL事業を開始し、DSLを主体としたコンテンツを提供してゆくことになると思われます。

「接続料無料」は意味を持つか?

現在、無料プロバイダーも出現してきています。1996年にハイパーネットといプロバイダーが最初にサービスを開始しましたが、翌97年12月には倒産しました。英国では電話会社に対するバックマージンがあったことから、広まったということです(『インターネット白書』より)。

しかし、日本では広告を見ることが前提になっているようで、広告が収入源となり、特定の通販サイトでの一定額の商品購入が条件付けられるところもあると聞いています。また、上記のようなインターネット高速化が実現すると、たとえ接続料が無料でも遅くては使いものになりません。そうなると、利用者が減少するので提供企業としても広告を出す意味もなくなり、結局は採算が取れなくなるかもしれません。

また、ダイヤルアップ接続を原則としてきた現状では、インターネット接続時間が増えると電話交換機の容量を超え、ビジー状態になり、サービスができないという状態も生まれているようです。これはインターネット接続業者側の問題ではなく、電話会社の問題です。しかし、今後CATVやDSLが普及するなら、電話交換機を今増やしても意味がないという見解もあるはずです、すると、ますますダイヤルアップ接続は使いにくくなり、それがDSLやCATVへの加入者の移動を促すことも考えられます。

医療機器との干渉の有無が問題

また、企業や施設向けには、ソニーは第一種電気通信事業者の認可を受けて高速インターネット接続サービス「bit-drive」(http://www.bit-drive. ne.jp/)を開始しています。無線方式による専用線接続サービスで、Fixed Wireless Accessとか、Wireless Local Loop方式と呼ばれています。これは、装置が割高なのが問題とされていますが、それも年々安くなっていくので、この問題は数年のうちには解決され、一気に日本全国へ拡大されるでしょう。なお、ソニー方式のWireless Local Loopというサービスは22GHzの周波数帯域を利用しています。これは、医療分野で利用されている周波数帯域と衝突することがないので、理論的には医療分野での利用や医療施設への敷設も可能と考えられています。

これに対し、無線LANシステムと呼ばれる無線インターネット接続サービスもマンション向けに提供され始めています。しかし、この帯域は2.4GHz帯とされ、ISMバンド(Industrial Scientific & Medical Band)として割り当てられた周波数帯を利用しています。特に、Medical Bandとあるように、医療用にも利用されている周波数帯域なので、病院なので用いると、医療機器との干渉の可能性が高いと指摘されています。ですから、2.4HGz帯の無線インターネット接続サービスが拡大すると、医療分野では大きな問題が生じる恐れがあります。

例えば、病院のそばにあるマンションなどに、この2.4HGz帯方式の無線LANインターネット

が採用されると病院の医療機器に悪影響が出る可能性があります。もし、これが原因で医療事故が起こったら、だれが責任を取るのか、という問題も起こるでしょう。こうした問題もあってかどうか分かりませんが、ソフトバンク、マイクロソフト、東京電力の3社により1999年に設立されたスピードネットのサービスは、現在も開始されないままのようです。また、携帯電話が病院内で使えないのもデジタル携帯電話とISMバンド周波数帯が近いことが問題になっているのです。

いずれにしても2001年は、インターネットが高速化されるのは必至でしょう。もともと、電話によるネットワークサービスは数分間の通話前提として構築されたものであり、インターネットのような長時間接続を考慮したネットワークではありません。ですから、ダイヤルアップ利用のままインターネット利用者が急増すると、通常の電話サービスが使いにくくなることも懸念されています。そうなると、今度は、インターネットを利用した通話という概念が生まれます。

医療向け動画はオンデマンドに

インターネットを利用し、音声のリアルタイム送受信が可能になると、無料で双方向性の通話が可能になります。そうなれば、通常の電話を利用する人はいなくなり、ダイヤルアップ接続は使えなくなってしまいます。将来、高速インターネットが完全に日本全国に普及した場合、電話料金を払うのは携帯電話だけで、家庭にある電話装置は不要になり、家庭から電話する場合には必ずインターネット通話を無料で利用する時代が来るかもしれません。

FAXシステムも、電子メールの添付ファイルに置き換えられ、家庭の電話機が消滅するころに、FAXという概念や装置自体も、世の中から消滅してしまうかもしれません。現在、パソコンが拡大したことで、ワープロが消滅しつつあるのですから、夢ではない話かもしれません。

また、動画についても同様です。インターネットが高速化すれば、大容量のデータの送受信や、動画の配信も容易になります。オーディオビジュアル情報に関する圧縮技術の進歩とパソコン処理能力の飛躍的な向上により、表現力に優れたマルチメディア動画コンテンツが必然的に要求されてくることでしょう。

特に、医療分野では治療に利用すべき情報が、医師は、その場でそのときに必要になります。つまり、オンデマンド性の高い情報であることが重要です。その意味では、衛星放送TVや地上波TVからの動画情報では臨床現場に生かすことは困難です。つまり、動画情報も、高速インターネット化の時代になれば、従来の一方向性で非オンデマンド型であるTV放送方式は使いにくくなります。大多数の医療関係者のニーズは、インターネットからオンデマンドで動画情報をダウンロードする方式に移行していくでしょう。

また、TV局のようなスタジオや設備がなくても、医師が自分でデジタルカメラやデジタルビデオで撮影した動画をホームページ上に張り付けておくだけで、立派な動画配信システムとなります。つまり、医師1人1人が、あるいは製薬企業1社1社が、医学向けTV放送チャンネルを持てる時代になるわけです。

そんな時代が来るのは、まだまだ先のことだろう、と思う方もいるかもしれません。しかし、日本ロシュ、朝日新聞社、ソニーの3社で協力してつくられたインフルエンザのオンラインセミナーを、一度見た人は、そうした時代がすぐそこに来ていることを実感するに違いありません。URLは、http:www.so-net.ne.jp/vivre/influenza/roche/ です。これだけ質の高いものがインターネット上で見られるのであれば、わざわざ講演会場まで足を運ぶ必要はなくなるだろう、という印象を持ちました。講演会場では1回しか聞けませんが、オンラインセミナーであれば重要な箇所を何度も聞き返せるので、数倍、勉強になりました。

こういうオンラインセミナーが日本でも公的セミナーとして認定されれば、産業医や認定医の資格をもらうために、わざわざ土曜日や日曜日をつぶして講演会に参加し、受講証明書シールをもらう必要もなくなるでしょう。学習効果も数倍、高まります。

このように、2001年は、高速インターネットの爆発的な普及によって、医療業界に対する潮流や変革が起こることを期待したい、と思います。

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