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プラスαのインターネット活用術34

Medical Tribune 2000年10月12日 17ページ ©︎鈴木吉彦 医学博士

遠隔画像診断 小学生レベルの技術で可能に

画像処理に格段の力

 先日、糖尿病性神経障害の研究会で、最前列に座ってデジタルカメラ(サイバーショット)で発表を撮影していたら、多くの先生方から驚かれました。これで発表画面を撮れるのか、という質問だったので、「300万画素以上の精密度で撮れるデジタルカメラであれば、通常の講演会の発表内容ならば、間違いなく撮影できます。ノートを取る必要はほとんどありません」と答え、画面も見てもらいました。スライドに映っている細かい文字や図表、フローもきちんと見えており、帰宅後、講演内容を再チェックするには十分の画面です。

 64メガバイトのメモリースティック(ソニー系の記録媒体)であれば、2,000枚以上の写真が撮れます。フィルム代も気にする必要がないので、枚数を気にせず撮ってしまう、という感じです。

 最近では、筆者はVAIOのC1に凝っています。これは小型パソコンにカメラが付属しています。ですから、デジタルカメラがなくても、C1から直接、講演のプレゼンテーション画面が撮影できると思って喜んでいたのですが、デジタルカメラでないと、ズーム調節がうまくできないことがわかりました。そのため、今は簡単なミーティングの資料撮影に利用しています。

 なお、デジタルカメラで講演会の発表内容を正確にキャッチするには、最前列に座らないとうまく撮れないことがわかります。これからデジタルカメラを持つ医師が増えるにつれて、スライドを正確に撮ろうとして講演会場の正面最前列に座りたいという人が増え、座席の取り合いになるかもしれません。

 VAIOには、画像処理機能がたくさんついています。操作を覚えなくても、デジタルカメラから、画像処理まで一連の作業が結び付いていて、マニュアルを読まなくてもできてしまいます。その意味では、VAIOを使っているとパソコンであることを忘れ、画像音声加工専用装置のように思えてしまいます。

 これは、VAIOが3ヶ月ごとに新製品を発売するという生産サイクルの速度が速いために可能になるのです。次々と新製品、新機能が追加されるので、VAIOにはまった人は、その魅力のとりこになるというのも理解できます。

2つの方法を駆使

 さて、インターネットというのは、TCP/IPというプロトコルを用いたパソコン同士のネットワークのことですが、ソニー製品の場合には、メモリースティックという形式で、パソコン同士が結び付いています。ですから、VAIOを利用していると、自分は2種類のネットワークを利用していると感じるようになります。

 つまり、1つはもちろんインターネットです。そして、もう1つがメモリースティックです。最近ではこの2つの方法を駆使し、どこからでも、いつでも、かなり大きい容量の画像動画データでも移動できます。これまで筆者はMacユーザーだったので、データの互換にはかなり不便だったのですが、今はデータの移動や転送については、なんでもできるという感覚が持てます。

 最近では、自分のため、あるいは自分の近くにいる人へデータを渡すときにはメモリースティックで、自分と遠く離れた人にデータを渡すときにはインターネットで、という形でのネットワークの利用法が自然になってきました。そして、以前使っていたフロッピーディスクは、ほこりをかぶっています。

 2HDフロッピーの50枚分が、小指ほどのメモリースティックに格納されてしまうわけですから、フロッピーを利用する気がしなくなりました。

 最近では、600メガバイトという大容量のデータは、CD-Rに書き込みますが、小規模サイズのデータに関しては、メモリースティックかパソコンのハードディスク、あるいはインターネットを利用しサーバ上にアップし、格納しておくことにしています。

 なお、インターネットプロバイダーに依頼し、自分のサーバ空間を持っておけば、どこからでもファイルを格納したり、取り出すことができます。海外など遠隔地に出張するときには安全な格納方法です。S0-netの場合、会員にサーバ容量が割り当てられており、自分専用として持つことができます。

簡単な遠隔診断が可能に

 患者の様子をデジタルカメラで撮影し、その場から友人の医師へ電子メールで送り、画像診断をしてもらうというような行為は、非常に容易になってきました。内視鏡画像や病理画像なども、120キロバイトくらいの大きさのファイルであれば、抵抗感なく友人に送れる時代になっています。

 将来は、ファイリングしたい画像ファイルを、インターネットを利用してサーバ上にアップし、複数の医師と共同でそれを見ながらディスカッションすることも可能になるでしょう。あるいは、メールで画像を添付ファイルとして送りつつ、そのメールを受けた複数の参加者同士でディスカッションするという方法も可能かもしれません。

 これまで遠隔医療、遠隔画像診断は、医療情報技術の最先端のテーマとして、実現には難しい夢のような話と考えられていました。しかし、上記のようなデジタルカメラの発達やインターネットの普及によって、その概念が大きく様変わりすることでしょう。

 静止画像のほかにも、音声や動画も簡単に送ることができるわけですから、画像ファイルサイズの問題や、回線の速さの問題が解決できれば、これまで大問題として考えられていた技術的問題が解決できるようになるでしょう。

 小学生にでもできる技術の応用で、実現可能な身近なテーマになってきていると言えます。

個人情報の機密性保持が課題

 ただし、上記のようなデータ転送を容易に行っていると、患者の個人情報が、インターネット上に流れてしまいます。例えば、政府の高官が脳梗塞になった場合、そのCT画像が、あるプロバイダーのメールサーバに保管されていることがわかり、それが第三者に漏れてしまったら、大変なことになります。通常、そうした行為はハッカーを取り締まることで防御できるはずです。

 しかし、理論的には、どんなに優れたプロバイダーであっても、完全にセキュリティーを保てるとは言えません。

 ですから、データに暗号化を加えたり、医療業界だけの人しか利用できないサーバを構築したり、指紋認証などの生体認証システムを用いて利用者を特定する、といった各種のインターネット特殊技術を組み合わせたハッキング防止が必要となってきます。  Mediproは、4万人の会員を有し、医療業界のNO.1ポータルサイトとしての価値は定着してきましたが、上記のような遠隔医療を支援するという意味では、まだまだ工夫が足りません。ですから、Mediproにおいては、そうした個人情報の機密性を必要とされる医療情報の交換に対して、ソニー・グループの技術を応用し、どのようなシステム提案をしていけるかという点に、今後は社会的な期待が注がれていくだろうと考えています。

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