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臨床とインターネットの接点⑯

Medical Tribune 2002年7月25日 30ページ ©︎鈴木吉彦 医学博士




ITによる学会ハイライトニュースさまざまなサービスが利用可能に

学会ホームページにDairy Summary

 6月にサンフランシスコで開かれた第62回米国糖尿病学会(ADA)に参加しましたが,今年の驚いたことは,抄録本が事前に届かなかったことでした。ですから,どのようなスケジュールで,だれが何を講演するのかという詳細は,ADAのホームページで調べるしかありませんでした(http://www.diabetes.org/)。私を含め,多くの日本人医師は,このような突然の「学会抄録のIT化」に対し,かなり動転していたはずですが,学会の運営においても,紙よりもホームページでの情報発信がサービスとして優先される時代になったことを象徴する出来事だと思います。

 そのためか,学会場でのインターネットを無料で利用できるインターネットカフェ・サービス・コーナーは,連日満員でした。利用時間も制限され,長く利用していると,次の人に席を譲るよう監視員から注意を受けるほどです。学会初日は利用をあきらめ,2日目の朝早く学会場を訪れ,利用しました。キーワード検索をかけて,素早く聴講したい内容のみを確認し,必要な部分だけ印刷して内容をチェックしたわけです。

 また,日々の話題となった演題のサマリー(Dairy Summary)も,ホームページ上に掲載されました(図1)。その結果,聞き漏らした内容についても,後になってチェックできるようになりました。

 学会事務局側は,「学会で発表された内容をできる限り多くの医療関係者に知ってもらうことが重要になったため,インターネットをベースにした教育プログラム(Internet-based educational program)の一環として公表を始めた」とアナウンスしています。従来,プレス向けのニュースとしてしか発信していなかったものを,ホームページ上に公開したのではないかと思われます。

 学会場ではたくさんの話題を聞くため,聞き漏らしがありますし,最新の話題を話されても,わからないところが多く出てきます。そのため,私の場合は,学会が販売するテープ販売サービスを利用し,聞きたいテープのみを選んで購入して聞き直すことにしています。昨年は,インターネット上でもテープの購入を受け付けていたので,学会場で購入できなくても,後でホームページ経由で申し込みが可能でした。将来は,そうした音声情報などもInternet-based educational programの一環として,学会事務局が発信サービスをしてくれればありがたいと思います。

MT社も学会取材記事を電子メールで配信

 メディカルトリビューン社がインターネットで情報発信するサービス(Medical Tribune Congress Newswave)も,さっそく役立ちます。まずは,「ADA 2002 ハイライトニュース(◯月◯日取材分)」というタイトルで,電子メール配信記事として送られます。(図2)当地では,じっくり学会のホームページを見ている余裕もないことが多く,また時差の関係で眠いこともありますが,この電子メールニュースだけでも学会でどういう話題があったのかが確認できます。翌日,その内容を会場にいて,実際に聞いた知り合いの医師に尋ねたり,話題にすることもでき,このメールニュースの即時性は,日本にいる医師だけでなく,学会に参加している医師にとっても便利なわけです。

 また,電子メールだけでは図表がないので,全体像がわからない場合が多くあります。そのため,帰国して時間に余裕ができた段階で,ホームページに掲載されている内容を読みます。この内容は,Medipro(http://www.so-net.ne.jp/medipro/)の「学会・セミナー」のコーナーから読むことができます(図)3)

 なお,Medical Tribune Congress Newswaveのトップホームページでは,初日の来場者インタビューという本紙独自のインタビュー内容を確認できます。これは,学会の模様を知ったり臨場感を感じるのに役立ちます(インタビューされている医師たちの緊張感が伝わってきます)。

 このサービスでは,図表が明瞭に示されているため,理解を深めることができますし,監修者のコメントを読み直すことで,発表の位置付けを理解することが可能になります。私は必要な部分をHTMLファイルとして「保存」したり,プリントアウトしています。

Medscapeはじっくり取材タイプ

 インターネットで学会のハイライトを取材してくれるサービスとしては,米国ではMedscapeのサービスが老舗として有名です。Confernce Coverageは,現在では年に約180本もの学会をカバーし,えりすぐりの内容をフィーチャーしています(図4)

このサービスは,専門医あるいは医療関係者のライターが取材し,発表の内容をサマライズするものです。じっくり取材し,関連する論文も調べ上げ,引用し,かつその内容を学会や講演者に再度,確認を取ってから,ホームページ上に掲載するというステップを踏んで公開されます。取材者や編集者らも,内容を確認するために時間が取られることから,学会が終了しても,直ちに公開されるというものではなく,数週間は待っていなくてはいけないという点が,Dairy Summary

やMedical Tribune Congress Newswaveとは異なり,逆にそれが特徴だとも言えます。また,英語で原文が記載されているため,英語力が必要です。ただし,製薬企業などのスポンサーがある場合には,日本語として翻訳されて公開されます。

 このように,1つの海外の学術集会から,ITをきっかけにしたさまざまな形の「サービス」が生まれてくるようになりました。私たち日本の医療関係者は,どのようなサービスが,どのようなタイミングで、どう配信され、どのような恩恵を受けることができるのかをよく認識し,せっかくの機会を逃さないようにしたいものです。

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