第18回 ネガティブになる広告や意見
MEDIAPEX インターネット進化論 2000年1月1日 第210号 ©︎鈴木吉彦 医学博士
ネガティブキャンペーン
医療業界は、法律の規制があって、一般向けに自社の製品の製品の宣伝をしてはいけないのですが、他社の製品についてのクレームを公表してはいけない、という制限はありません。ですから競争相手になる会社の製品の欠点を、掲示板などに書き込み、大きな問題にする悪徳ケースがあります。問題にならないようなものであれば、普通は無視されます。しかし、ポイントをついて、社会問題になるような場合には無視できないことがあります。
例えば、「○○企業の女性の生理用品にアレルギーがでます」というようなウワサや、「○○企業の○○で副作用例が〇名出たといいます」というような内容を掲示板に書き込む人がいます。そういう事場合は、それを信じて、その企業の製品を使うのを止めてしまう患者さんがいるかもしれません。
通常、そのような副作用は、医師が考えれば問題にならないことでも、一般の患者さんたちは、非常に悪い製品を使っている、と信じてしまうこともあるのです。
こうした発言は、掲示板の管理者が原則として削除するべきです。しかし本当に、その製品の欠点を先に見つけて、多くの人たちに警鐘を鳴らすための善意による発言の内容なのかもしれません。
ですから善意による警鐘なのか、競合相手へダメージを与えるための悪意による発言の内容なのかーの判断は難しく、問題になることも少なくないでしょう。
批判記事が多いホームページには広告を出しにくい
紙を使った雑誌での広告は、紙面を工夫することの自由度が高かったといえます。例えば、ある薬剤の広告をしても、同じ画面にはその薬剤の批判記事を掲載することはなく、紙面構成を変えることで調節していました。
ところが、ホームページでは、ニュース記事と広告バナーが同じ画面にでてしまうことが多く、配置の調節を記事ごとに行うのは難しいという問題があります。つまり同じ画面に、ある薬剤の批判記事があり、かつ、その画面にその薬剤の広告バナーがある、という状況が作られてしまうのです。そうなると、広告バナーはその薬剤に対する批判を強調するものとなり、広告価値がなくなるどころか、悪い評判を高めることを助けるものとなるわけです。
ですから、特に薬剤などに関する広告と、薬剤を評価するような内容の紙面とは、切り放しておかなくてはいけない、という問題があるのです。こうした事を上手に行うには、「MyMedipro」(http://www.so-net.ne.jp/medipro/login.html)にあるようなOne-To-One技術を駆使しなくてはいけないわけですが、通常のホームページの搭載できる技術ではなく、かなり高次元の技術が必要となります。
掲示板やチャットでは声の大きな人が強くなりやすい
掲示板やチャットなどのフォーラム形式の空間では、多くの人たちが交流を深めることができます。しかし、少人数の人たちが仲良くなりすぎると仲間意識がでてきてしまい、他の人を受け付けにくくなることもあります。新人がはいる時には、そうした点が障壁になることも多いのです。
また、自分たちだけの意見に固執して、他人の意見を受け付けにくい患者さんもおります。さらに、グル-プの世話役の人が、発言権が強くなり、他の人を仕切ってしまったり、他の参加者の意見を押しつぶすこともあります。また、弱者の心を平気で踏みつぶす人もいるのです。差別発言を平気でする非人もいますし、思いやりのない言葉を投げつける人もいます。
また、参加者のいずれの人たちも真剣に討論しているのですが、それでも衝突してしまう場合があり、互いを中傷するだけの場になることも少なくはありません。
インターネットでの発言は自由なだけに、必ずしもモラルがある人だけが参加しているとか、みんなと親交をもてる場なのではないことを忘れてはいけません。時には、簡単に相手を傷つけることができる凶器になることもあります。そして企業であれば、それを利用して営利目的にホームページを利用しようとする会社もあるので注意が必要です。(例えば、自社のダイエット製品を使った利用者になりすまして、宣伝をする人がいたり、他社の製品を使った利用者になりすまして批判をする人がいたりします)
このように、インターネットにおいては、自由で平等で、かつ、正しい広告や意見があるとは限らないという点には、普段から注意しておくことが必要と言えるでしょう。