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インターネットが医療を変える 第6回

インターネット医療を変える 第6回

サービスコードが社会に提案する新しい形の情報提供サービスの意義

鈴木吉彦 ソニーコミュニケーションネットワーク㈱General Manager 医学博士

雑誌名:Medical ASAHI  2000年11月   朝日新聞社  

68ページから69ページまで コピーライト、©鈴木吉彦

●宣伝バナーだけで収益に期待できない

 「アクセス数はいくらですか」「ページビュー(何ページみられたかという数字)はいくらですか」という質問が、医療向けの広告代理店からMedipro事業局に問い合わせが来ることが多い。インターネットの世界では、ホームページの価値は、このように、広く、多くの人に情報をみてもらうということが優先されていた。

 アクセス数を増やすためには、多くの人が必ず訪問するホームページである必要がある。つまり、訪問者が必ず通る門のようなホームページである必要があり、その機能をもつホームページを“ポータルサイト”と呼ぶ。

 しかし、ポータルサイトになったとしても(なお、既にMyMediproは、ポータルサイトと呼ばれている)、そこで表示される宣伝効果は、紙媒体ほどの効果を得ることは少ない。パソコンの画面の広さというものには、15インチとか、17インチといった画面のなかの閲覧ソフトにしか表示できない、という空間的な制約がある。そのためその狭い空間のなかに、例えば、縦2cm、横6cm程度の広告を出しても、それがクリックされないことには、広告の中身や真意が伝わりにくい。ホームページ上の広告を、広告バナーとか、宣伝バナーと呼ぶが、このバナーをもって代理店が営業をしようとしても、大きな収益が期待できない。

 また、ページビューを増やすためには、何度も何度もページをめくるという作業を利用者に課す必要がある。つまり利用者である医師は、その度ごとにクリックする回数が増えるし、面倒なのである。(図)

 しかし、MyMediproの基本コンセプトは、できるだけ、そうした作業を減らし、必要な情報を必要としている医師や医療関係者が、迅速にダイレクトに情報にたどり着けるように考え、システムが構築されている。つまりMyMediproは、「ページビューが少なくても、訪問者が多いほど価値が高い」というコンセプトを持っているのである。だからMyMediproにおいてはページビューを議論しても、そのホームページの価値は計り知れない。しかし、そうなると、広告代理店は広告バナーだけでは、収益を上げることがいっそうできないということになる。

●One-To-Oneを利用する

 もともとサービスとは特定の利用者に対し利便性や優先性、つまり、メリットを感じてもらうことを目的とするシステムのことである。特に医療業界においてのサービスが多く、これまでは、最新医学ニュースや学会ハイライトなどをまとめた雑誌やCDなどのが作成され、医師へMRが手渡しをしていた。

 ところが、インターネットの時代になって、サービスの意義が不明になった。製薬企業が医療関係者向けコンテンツを他社から購入し、自社のホームページで公開しても、それはだれもがみることができるので、その恩恵を受けても医師は、有難みを感じにくい。逆に1社だけでそのサービスを提供しても、その会社の認証(ID Password)がわからない、あるいは、忘れてしまっている医師にとっては、サービスを受けられないので、意味がない。逆に、もし、そのサービスが、価値の低い内容であるならば、無駄な時間を費やされたということから怒る医師も増えてしまうだろう。自分には関係ない領域の情報であれば、無駄な情報になる可能性も高い。その場合、医師は、それをサービスとは考えず、迷惑と感じるだろう。つまり、インターネットで一般公開された情報サービスは、製薬企業にとってはリスクが高く、医師mpサービスと感じにくいものであった。

●One-To-One技術はサービスの形を変えてしまう

 One-To-One技術や「MR君」技術を利用すると、ターゲットを絞ったサービスが可能になる。製薬企業のサービスコードを持つ医師に対してだけ、あるいは、特定の「MR」のIDを持つ医師に対してだけ、役立つコンテンツをみてもらうことができる。逆にいえば、サービスコードを持たない医師や、「MR」IDを持たない医師は、そのサービスを受けられない。恩恵を受けられない医師にはいじわるに思えるかもしれないが、恩恵を受けられる医師には、より高い価値として感じられるサービスとなり、感謝されるようになる。

 本来、自由経済社会におけるサービスというのは、だれにでも平等に与えられるべきものではないと思う。また、サービスをしたい側と受けたい側との合意があって、初めて価値が成立するものである。例えば、贈り物をしても、贈りたい側が勝手に贈って、受け手とは関係のない内容であれば感謝されない。押しつけに思えてくる。ときには、贈り物をする会社が、迷惑なことをする会社だと思えてくる。つまり、贈る側が贈られる側の立場や気持ちを考えて、ターゲットを絞って贈られるべきものなのだと思う。また、だれもが受けられるサービスであれば、それは公共的なサービスであり、自由経済社における製薬企業が医師に向けて行うべきサービスとは異なるのだと思う。

 そうした意味で、製薬企業にとっては、情報を贈り、あるいはインターネットにおける利便性を、利用者(つまり製薬企業にとっての顧客である医師)に感じてもらうには、対象を絞り込めるというOne-To-One技術が、インターネットにおいては不可欠である。この技術を持たない場合には、すべての人に同じサービスが与えられるので嬉しい人もいる半面、迷惑と感じるに人も出てきてしまうのである。また、だれでも受けられるサービスを受けた医師や医療関係者の喜びも半減するはずである。

●サービスコードの価値とは

 MyMediproではサービスコードを設定している。これは本来、企業コードと呼ばれるべきものである。すなわち、MyMediproでは、特定の企業が、特定のコードを発行し、それを持つ医師あるいは医療関係者に対してだけ、特定のサービスうを提供することが可能になる。また、製薬企業側が一つのサービスコードを、医師に提供するコードとして持てば、それを持つ医師だけを対象として絞り、多くの医療関係者にサービスを提供できる。その意味ではサービスコードが構築するシステムは、いわゆるOne-To-Oneの技術と考えられているが、厳密にいえば、その一部を利用したものであり、1対1のサービスではなくて、1対nのサービス機能といえるものである。

 MyMediproの場合、サービスコードをプロフィールに入れると、例えば、画面右側にその製薬企業の医療関係者限定空間に入るための、ナビゲーションのための入り口となるリンクが現れる。この技術によって、医師あるいは医療関係者は、自分が知りたい薬剤を持つ製薬企業の情報へのアクセスが容易になる、というサービスを受けることができる。

 つまり、このように、サービスを受けられる人を限定するサービスこそが、インターネットにおける本当のサービスではないか、と筆者は考えている。だれもが受けられるサービスよりも、特定の人だけが受けられるサービスのほうが、受ける側は、価値を高く評価する。ありがたいと感じる。筆者も医師であり、医師の気持ちは理解しているつもりだが、やはり、隣の医師がもえていないサービスのを自分がもらったときのほうが、より嬉しく感じるのである。そのサービスを与えてくれる企業には高い評価をし、その製品に対しても同じような高い評価をするようになる。その企業から医師は、「自分は大切にされている」と感じると思う。これが、本来の、製薬企業など、情報サービス提供する側からみても、顧客満足度をお高めるという目的にも合致するわけである。

 であるから、今後、MyMediproの利用者の方々は、自分が欲しいと思うサービスを提供する製薬企業に、サービスが欲しいからサービスコードが欲しい、とMRを通じて依頼していただきたいと思う。あるいは、「御社のサービスコードと結びついたサービスは何ですか」と質問してもらうようなことも増えるだろう。

注釈

  1. MyMedipro/インターネット上の医師向け医療情報の取得に役立つ仮想協力空間都市。(http://www.so-net.ne.jp/medipro
  2. One-To-One/ホームページ上で利用者がプロフィールを登録し、内容を閲覧する際には利用者のプロフィールに合わせ1行ごとにカスタマイズし、内容を表示する仕組みのこと
  3. MR君/MyMediproの画面上に表示されるMR個人個人にメッセージバナーを利用し、医師とMRとが互いに連絡を取り合ったり、MRが医師に対して薬品のオンラインプレゼンテーションができるようにする機能のこと。

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