My Medipro

プラスαのインターネット活用術30

Medical Tribune 2000年9月14日 20ページ ©️医学博士 鈴木吉彦

日本のMRシステムが変わる⑶

「MR君」の利用で多くのメリット

「MR君」はインターネットを通じ、医師とMRとのコミュニケーションを迅速、かつ確実に行うシステムのサービス名称です。前回と前々回では概念的な説明をしました。今回は「MR君」を利用するときの医師側のメリットについて整理してみました。

連絡を取りたいMRと優先的に連絡を取れる

 「MR君」システムを利用するには、医師はまず、製薬企業の特定のMRから、MRのIDに相当するコードを教えてもらいます。それを、My-Mediproの所定のMR-ID欄に書き込みます。すると、そのMRのIDに連動する仮想MRが現れ、リアルのMRが仮想MRシステムを通じて、医師に自由にメッセージを送ることができるようになります。メッセージが記してあるバナーは、医師が利用するMy-Mediproのフロント画面の上側に現れます。この仮想MRを表示させるかどうかは医師側で選択できます。表示したいMRだけを2人、フロント画面のトップの位置に表示することができます。通常は連絡を取りたいMRを選択するのが便利でしょう。3人目からは「MR待合室」で待っていてもらいます。

 このように複数のMRの表示をどうアレンジするかは、医師側で設定できます。これによって、いつも連絡を取りたいMRと、そうでもないMRとを区別できます。つまり、医師にとっては、いつも連絡を取りたいMRからのメッセージは、My-Mediproを訪問するだけで目に飛び込んでくるようになります。そうでないMRからのメッセージは、MR待合室を訪問してからチェックすることになります。

医薬品情報をオンデマンドで入手 

 従来のMR活動システムでは、医師が医薬品情報を欲しいときに入手しにくいという問題がありました。逆に医師が忙しいとき、あるいは情報を入手したくないときに、医薬品情報パンフレットを手渡されることが多くあります。忙しいときにパンフレットを渡されても目を通す時間がなく、紛失してしまうことも少なくありません。後になって必要と感じるときには、手元に見つからないことも多いのです。

 これに対し、「MR君」システムには専用の送受信機能があります。医師は過去の送受信メッセージをチェックすることもできます。製薬企業側は、従来の紙でつくっていたパンフレットをデジタル化し、My-Mediproのなかに保存しています。ですから、調べたい医薬品についての最新情報をいつでもどこからでも、必要に応じてオンデマンドで、いわゆるデジタル化されたパンフレットとして入手することができます。手元に保存したいときにはプリントアウトすればよいわけです。

 このシステムが実現すると、医師にとっては、電話をしてMRを探したり、廊下や医局で待っているMRに声をかける必要がなくなります。代わりに、直接、仮想MRに「送信」ボタンのクリックという形でコールをすることで用がすみ、時間的および物理的な束縛がなくなります。医薬品情報のオンデマンド的な情報交換を、医師も製薬企業も便利と気が付くことで、新しい形の医師とMRとの人間関係を構築することが可能になります。

MRの個人情報を保管しいつでも取り出せる

 医師は特定のMRへの連絡を取りたいとき、「MR君」を利用すれば、そのMRの名前、連絡先、電話番号、営業所を確認できます。リアルのMRから名刺をもらっても、それを整理している時間的な余裕がないことが多いと思います。私も病院の勤務医を9年間勤めましたが、名刺入れを整理するのは苦手でした。また、担当MRが交替する都度新しいMRの名刺をもらうのですが、整理しきれなくなります。顔と名前も覚えられず、覚えても名前と顔が一致しません。ところが、「MR君」を利用すれば、MRのIDを所定欄に登録しておくだけで顔と名前の確認ができます。その製薬企業のMRの名前、会社の住所、役職、電話番号、ファックス番号なども確認できます。

 つまりは、医師はMRの名刺を整理し保存しておく必要がなくなります。MRにコールするだけでなく、このMR君のプロフィールを確認し、電話することも簡単にできるようになります。特定のMRへ連絡するためだけに、わざわざ医局秘書の手を煩わせる必要はなくなります。

双方向性のコミュニケーションが迅速に

 「MR君」を利用すると、メッセージを書いて「送信」ボタンを押すだけで、MRへメッセージを迅速に送ることができます。この際、医師は、リアル社会の担当MRの電子メールアドレスを、1つ1つ覚えておく必要がありません。そのための機能は「MR君」システムに内蔵されています。医師から送られたメッセージは、「MR君」と連携しているリアルのMRに数秒以内に届きます。MRはそのメッセージの送り先を4か所までの電子メールアドレスに、事前にセッティングしておくことが可能です。

 例えば、その1つをMRが携帯電話に設定しておけば、医師がコールした数秒以内に、その内容を確認することができます。MRがその場で返事を書けば、医師にとっても、MRとの双方向性のコミュニケーションは数分以内で完了します。

 文献などの依頼を医師がMRに送信した場合、依頼を受けたMRは、製薬企業の担当学術部門へそのまま転送することも可能になります。学術部門は、要望に応じた内容の薬剤の文献を準備し、担当MRへ文献がデジタル化されている場所を示すか、もしくは資料をインターネット経由で伝達します。それを受けたMRが「MR君」システムを利用して医師に文献を届けるわけです。このプロセスに掛かる時間は、これまでの何十分の1ですむでしょう。この情報交換は非常に迅速です。言うなれば、「インターネット速度」で情報交換が可能な時代になるのです。

 インターネット速度で医薬品情報の入手が可能になれば、医師はそれだけ早く薬剤を処方し治療に結び付け、病気を治癒させることが可能になります。それによって患者が早く退院できるようになります。つまり、「MR君」は医療の本質にかかわる部分を支援するシステムになります。

医療関係者限定の空間で安心してコミュニケーション

 通常の電子メールで、医師がMRから医薬情報を送ってもらって、関連するリンク先が書いてあったとしても、リンク先(URL)にある内容は、一般人でも見える空間に置いてあるはずです。しかし製薬企業の情報公開のルールにおいては、医療用医薬品の情報は一般人向けの空間においてはいけないことになっています。ですから、通常の電子メールでは、正しい薬剤情報をMRから医師へ届けることができないわけです。

 これに対し「MR君」では、医療関係者限定の空間に情報が掲載されており、MRからのメッセージも、そこへとリンクされます。ですから、MRは安心して医師へ情報を送信することができ、医師も安心してMRとコミュニケーションを取ることが可能になります。

-My Medipro

© 2024 MedicalProfession公開情報記事サイト Powered by AFFINGER5