特集パソコンを使う
インターネットにアクセス
鈴木 吉彦
インターネットとは元々アメリカ国防総省の軍事ネットワークから発達した国際中に繋がる通信技術の事です。現在では、世界中の人が使える技術となり、総ての情報メディアがインターネットを中心に集中しようとしています。インターネットを通じた情報伝達は、アメリカでは、手紙や電話をはるかに超える量になり、その視聴率もテレビを超えています。今では、インターネットは、デジタル情報技術の中心的存在となっています。IT革命と称される社会の変化は、すべてインターネットを中心として、変革が行われようとしているといっても過言ではありません。
これだけ大きな社会の変化をもたらす情報伝達の進歩を、糖尿病患者さん向けの教育に利用しようと思うのは、当然のことです。筆者は、四年前にソニーコミュニケーションネットワークソネット(So-net)から、インターネットを利用して、糖尿病を始め、多くの病気の教育のために利用できないだろうか、医療関係者のために貢献できないだろうか、というミッションをもらいました。
そして、四年の歳月が過ぎましたが、今では、ソネットが、健康医療では、最も熱心なインターネット接続プロバイダーと評価されています。筆者が構築してきた患者さん向けのホームページは、http://www.so-net.ne.jp/vivre/(
図)にありますので、ご覧ください。糖尿病患者さん向けの素材がたくさん掲載せれているホームページを見つけることができます。なお、本稿では、枚数も少ないので、糖尿病の患者さんがインターネットを始める時、どのようなメリットがあるか、を簡単にまとめてみました。
インターネットは患者会を仮想空間に構築できる
糖尿病患者さんにとって、インターネットを利用し、外部と連絡をとり、情報のやりとりをできることは、多くの知識を得ることに役立ちます。生活の知恵で克服できたことが、インターネットという場を共有することで、多くの人たちと、その知恵を共有することができます。また、インターネットを通じて、多くの人たちと苦しみを分かち合えることで、苦しみを柔らげる機会を得ることができます。
入院をすると、糖尿病をもつ病気の先輩がいて、相談にのってくれることがあります。糖尿病と診断されたばかりの頃、これからどうなっていくのだろうと不安が大きい時期があります。糖尿病患者さんが運営するホームページを訪問すると、同じ糖尿病をもつ先輩から簡単に指針を与えてもらうことができます。
従来は、そのような患者同士の励ましの場は、糖尿病患者の会、という組織として運営されていました。しかし、インターネットを利用すると、そうした組織を、仮想空間に構築できることができ、かつ、時間や空間の制約なく、誰でもが参加できるシステムを提供できます。
また、糖尿病患者さんは自分の病気体験を、ホームページ上でつづり、多くの人に公開することができます。読む側である患者さんも、ホームページ運営者に対し応援を送ることで、ともに勇気をだすことが可能になります。
ホームページを通して公表する内容によって、多くの糖尿病患者さんの実体験を、他の糖尿病患者さんが知ることが可能です。それによって、多くの糖尿病患者さんが、自分以外にも様々な体験をもつ患者さんが存在することを実感することができます。
例えば、1型糖尿病は全国に約1万人しかいません。病院に行っても同じ病気の人と会うことが稀です。そうした病気をもつ患者では、インターネットを利用して同じ1型糖尿病をもつ人を知ることや、その人たちの意見を聞くことは、勇気が出ることです。この病気をもつのは自分だけでない、と知ることは、頻度の少ない1型糖尿病をもつ患者や家族にとって、心の支えになります。
また、1型糖尿病には、教科書も多くありません。それは、数がでない書籍を出版社が出版しようとはしないからです。採算が合わないわけです。しかし、インターネット上に情報を掲載することは、出版と比較し、何百分の一の費用で済みます。月々1000円程度でサーバをもつことができます。そこに病気に対する教科書を置いておけば、世界中の誰でもが見て読むことができます。ですから、採算性を心配せず、情報提供が可能です。このように、安い値段で情報発信できることは、教科書を作りにくい1型糖尿病の場合には素晴らしい機能であるわけです。
例えば、昔、巨人軍のピッチャーで、糖尿病を克服したビル・ガリクソン投手の自叙伝は、本として出版されましたが、今では、入手するのが困難になっています。しかし、インターネット上では、すぐに内容を閲覧することが可能です。(http://www.so-net.ne.jp/vivre/)。
なお、アメリカには、1型糖尿病の子供さんのためのホームページがあります。このホームページは、英語が読めるのであれば、ぜひ、訪問してみてください。
糖尿病患者同士で集まるきっかけを作れる
糖尿病をもつ患者さん達が集まり、相互補助しながら、旅行できるようになります。糖尿病患者さんが交流の場を広め、海外旅行を企画し、旅行ツアーに参加するホームページもあります。最近では、紙パンフレットなどよりも、インターネットでの申し込みのほうが、増えています。企画をし、運用する人が決まれば、後はツアーの定員になるまで待てばいいだけですから、旅行会社もリスクが少ない形で運営ができます。実際に、糖尿病ネットワークというホームページ(http://www.so-net.ne.jp/vivre/soshin/あるいは、http://www.dm-net.co.jp/)では、糖尿病患者向けの旅行を企画し、運営し、すでに多くの実績を残しています。
恵まれない子供たちへのチャリティ活動として、インターネットを利用し募金をすることが可能になっています。多額の募金を、全国から募集するためには、インターネットは安価で多数の人から協力を得られる絶好の道具です。アメリカ糖尿病学会のホームページ(http://www.diabetes.org/)に、こうした募金を集めるシステムがあります。
また、学会のホームページで、関連商品を購入すると、その10%が募金に回されるというシステムをもつサイトもあります。
ソネットが運営している「元気でVIVRE、家庭の医学」というホームページでは、各種の病気が整理されています。糖尿病に関する掲示板なども、整理されています。そこから、役立つリンクを探し、役立つ情報を見つけることも可能です。
(東京都済生会中央病院内科糖尿病外来)