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プラスαのインターネット活用術36

Medical Tribune 2000年10月26日 42ページ ©︎鈴木吉彦 医学博士

インターネット時代の企業分割 機能的分割が重要

分割で“元気が出る”

 マイクロソフト社を知らない人はいないと思いますが、最近になって米国で大きな問題が起こっています。基本ソフト事業と、応用ソフト事業を分離するように、企業分割の命令が出ているのです。

 これは、OSという基本システムを販売しながら、その商品である応用ソフトとの抱き合わせ販売をしているのが問題である、と指摘されたためです。特に、インターネットの時代になり、ネットスケープとインターネットエクスプローラーとの対決が浮き彫りになってから、この問題は鮮明になりました。マイクロソフト社は分割を拒否しています。もちろん生みの親であるビル・ゲイツ氏から見れば、もともと1つの組織を、他人から言われたからといって分割するのは納得できないことだと思います。しかし、分割しないのが本当に正しい道なのか、考えるべき点が多いと思います。

 企業規模が大きくなれば、分割したほうがよいこともあるのではないでしょうか、とする見方もあると思います。1982年のAT&Tの分割が良い例です。分割によって、国際競争力を付けて強くなったのです。

 これに対し、企業分割を免れた例としてはIBMがあります。今も立派な会社ですが、企業分割を指摘されたころには、IBMの内部は大きくもめたそうです。しかし、IBMが分割しなかったために、今では、コンパックやデル、サンマイクロシステムズが、パソコン販売やインターネット技術などのチャンスをものにして、大会社になっています。もし、IBMが分割していれば、今ごろは、インターネット企業の中心は、IBMから分割された子会社企業の多くが世界のリーダーになっていたのではないか、と思います。

 旧国鉄も分割して、各社が独自で経営できるようになりました。今では分割それ自体は良かった、と多くの人が考えています。また、NTTも分割によって元気が出ています。ⅰモードなどの開発は、昔のNTTではできなかったかもしれません。NTTが分割によって元気が出たために、かえってKDD,DDI、IDOが団結しなければならなくなりました。また、最近では電話のNTTというよりは、携帯電話のNTTというイメージのほうが強くなったようですが、これも分割したことによって新しい企業イメージが出て、新時代において元気がでるということを証明した良い例だと思います。

 このように、特にハイテクの企業になればなるほど、規模が拡大すればするほど、一企業でいるリスクが高くなります。分割したほうが「元気が出る」ことが多いです。

 JRを6社に分けたのは、理解できなくもありません。鉄道事業そのものが、物理的に分割されているので、矛盾が生じにくいからです。しかし、例えばNTTを東と西に分けたのが良かったのかどうかは、今後、議論される問題になるかもしれません。確かに電話事業だけを考えた時代では、物理的な基地局を中心に分割を考えるのが自然でした。しかし、基地局という概念が存在しないインターネット時代になると、ネットワークは日本の東の西もないので、1つに考えたほうがよいのです。ですから、地理的な意味合いの企業分割では意味がなくなっています。物理的ではなく、機能別に企業を分割しなくてはいけない事態が増えているのです。

きめ細かいサービスが可能に

 現実社会では企業の合併や提携が進んでいます。金融業界での合併、自動車業界での合併、強い者同士の合併は国内外で多く見受けられます。しかし、企業が大きくなると顧客のことを考えにくくなります。特にこの傾向はIT(情報通信技術)では強く、大きくなったネットワーク企業では失敗する確率が高くなるのです。また、インターネット事業の場合、わずか12~17インチのモニターを利用してサービスを提供するわけです。ですから、提供するIT企業に10人の社員がいても、3,000人の社員がいても、利用できる画面は同じサイズです。現在の社会では、3,000人の会社と10人の会社では、建物の規模も違うのですが、ネット企業の場合は、その違いが分かりにくいのです。現実の社会で社員が多い会社ほど、本質的に効率性は悪く、その意味ではネットビジネスで成功しにくい企業になる、という判断を私はしています。つまり、社員数が多いことはIT企業としては自慢にならないということです。逆に、機能を限定し、小回りの利く部隊に分割するのが賢明な方法だと思います。

 「MR君」は、新会社をつくって運営することになりました。理由はMedipro自体が提携企業80社を超えるような大きな組織となったからです。このため、医師とMRとをつなぐコミュニケーションというシステムだけに特化した事業を成功させるには、Mediproの事業を分割させた形で、「MR君」に専念して新会社に運営させてほうがよいとの判断です。新会社の名称は、「ソネットM3」と言います。これにより、製薬企業とも密接に連絡を取りながら、また利用者である医師からも希望を取り入れながら、きめ細かいサービスが可能になると思います。私自身にとっては「MR君」は過去の作品として、今後は「MR君」に続く新規プロジェクトの創作のほうに専念することになります。

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